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あばたもえくぼ

日本中を混乱の渦に飲み込んだ「男女シャッフル災害」……あの日から、もう一年が経とうとしている。
あの日、あたしは付き合っていた彼氏の身体に魂が入ってしまった。以前のあたしであれば、何を言ってるの、と一笑に付していたと思う。
でも、災害後は研究が進み、魂が他の身体に入ってしまう現象がある一定の条件下で稀に起こりうる現象であることは日本の、いや世界の常識となっていた。

今回の現象は本当に突然起こった。
あたしはその時会社のOLとして働いていたのだが、目の前が一瞬だけふっと暗くなったかと思うと、気づけばオフィスにいた。それも、彼氏の席に座っていた。当時彼氏と付き合っていたことは社内に黙っていたので、とても焦って思わず立ち上がってしまった。でも、なんとなく見下ろすデスクの位置が高い。いや、身長が高くなってる?
思わず、今日そんなに高いヒールの靴を履いてきたっけ、と足元を見ると、あたしは自分がスーツを着て男が履くような革靴を履いているのに気づいた。
「どうして……えっ!?」声を出そうとすれば低い声しか出ず、何度も咳払いをした。同じように咳払いをする声があちこちから聞こえた。

その後のことは日本中が知っている。テレビをつけると無精髭を生やしたテレビ局のAD風の男が眉をひそめ、深刻そうな顔で足を揃えて倒し、いわゆる「アナウンサー座り」をしながら原稿を読み上げていた。後で聞いたところではそれは「元」某局の美人で有名なアナウンサーだったそうだ。

原因は不明であるがどうやら、都内で男女が他の異性の身体に入っている状態にあるのではないか、とその男が言うと、やだ、嘘ぉ、とあちこちで悲鳴のような野太い声が挙がった。
政府も当初機能しなかったが比較的対応は早く、夫人の身体になってしまった総理が非常事態宣言を出し、事態の収拾に向けて全力を尽くすことを発表した。

分かってきたことはいくつかある。
まず、今回の災害は、男は女の、女は男の身体に入る形で起こっているということだ。
また、もともと知り合いではない人間の身体に入ることはなく、全て知り合いの異性の身体に入っているということ。
そして、これはAさんとBさんの身体が「入れ替わる」のではなく、AさんがBさんに、BさんがCさんに、Cさんはまた別の誰かに、というような「魂のシャッフル」によって起こっているということ。
そしてこの現象が日本全土に広がっていることだ。

「なにぼーっとしてるの、結衣」
あたしの肩を短髪の長身の男が軽く叩いた。
「ああ、美優」
「もしかして、あの日のこととか考えてた?」
「なんで分かるの?」
「そりゃそーよ。あたしと結衣、何年付き合ってると思ってるの」

女言葉で話す男、というのが違和感があるかもしれないが、今の日本ではかなり普通のことになってしまった。今の世の中、「男はこう」「女はこう」という決まった価値観はほとんど存在しない。そういうあたしも彼氏の身体になってからも女言葉で話しているし、元男──いまの世の中では「女」と呼ぶのだが、いまの女もかつての男言葉を話す人が多いのではないだろうか。でも、女言葉で喋っている女もいる。かつての男言葉、女言葉なんていう価値観は今は消滅してしまったような気がする。

美優、と呼ばれた男は、「連れションしようよ」とにっこり笑った。

「あ、結衣、またおちんちん大きくなったんじゃないの?」
「ちょっと、覗き込まないでよ……」

男同士もこんな会話していたのだろうか?そうは思えないけど、男になって良かったかなと思うことの一つが立って用を足せることだ。

美優がいたずらっぽい目をして言う。

「もしかしてさあ、『彼女』に揉んでもらってるから大きくなってるとか?」
「え、女の胸じゃあるまいし、そんな事ってあるのかなあ」
「わかんなーい。大体、あたしたち女だった頃、別に彼氏に揉んでもらっても大きくなったりしなかったでしょ」
「もう美優、変な冗談やめて」
「あはは。でももう男の身体にも慣れてきたよね」

美優は快活に笑うと、アソコをプルプルと振ってそのままズボンのチャックを上げた。たしかに、馴染んでいる。あたしはそこまで豪快になれず、小便器の横に設置されているトイレットペーパーを小さく切ってアソコの先端を綺麗に拭き、専用のゴミ箱に捨てた。昔はこういったトイレットペーパーはなく、男はみんないまの美優のようにしていたそうなのだが、今の男性はそれがどうしても嫌という人も多く、設置されたのだという。

「でもさ結衣、リアルな話、男の方がいいと思わない?」
「えっ、そう?」
「だってさ、男の身体って力あるし。それに、今の雑誌のグラビアとかさあ、みんな本当に前男だったの?ってぐらい笑顔もエロ可愛く作っててさ、男に超媚びてんじゃん。この子たちも前はオッサンだったんだよね、とか思って。あたし見ただけでマジで興奮してさ、フルボッキしちゃうよ」
「ちょっと美優!」
「いいじゃん、誰もどうせ聞いてないよ。女だった頃はなんで男ってああなんだろって思ってたけど、今は男の気持ちわかるよね。ま、もう男だから当たり前なんだけど」

そういうと頭をかきながら、美優はあはは、と笑う。
美優、あんたは良いよね。美優は今や、会社でも一番イケメンと言われていた男の身体になっている。そんなに好きでもなかった前の彼氏(親戚の女子●学生になってしまったらしい)とあっさり別れて、自分に尽くしてくれる女の子──もちろん、元は男だけど──を見つけて付き合って。全てが順調じゃん。

「結衣、今度男子会しようよ。彼女のこととか聞きたいし。だってさ、唯香のいまの彼女って……」
「その話はもういいって」

あたしは美優の言葉を遮る。わかってる。美優はあたしのことを心配してくれてる。

「結衣」
「美優、あたしは今の生活で満足してるよ。この前も言ったじゃん」
「でも」
「わかってる……心配してくれてありがとう。でもね、もう少しだけ時間が欲しいかも」

あの日以来、この国の人たちは自分の生活を守ることで精一杯だ。美優のように全てがうまくいっている男に、あたしの心配をされること自体が少し腹立たしかった。
それに、あたしの今の生活はとても人に語れるようなものではないような気がする。

人の心なんて、結局身体的なものだったんだ、と思う。今のあたしにはそれが痛いほどわかる。



あたしはマンションのドアをばたん、と閉めて中に入る。

「あ、おかえり……」

と言ってにっこり笑う美優。いや、違う。美優はさっきまで会社で話していた男だ。美優に見えるこの女の子は、あたしの彼氏だった男──康介だ。康介はいまや、あたしの友人の美優の身体に入っていた。

この笑い方はあたしが調教した。美優にそっくりになるように、笑い方、振る舞い方、表情、口調、メイク、全てを教え込んだのだ。最初は嫌がっていた康介だったが、「言うことを聞かないならもう別れる」と言ったらしぶしぶ従った。それからというもの、康介はあたしといるほとんどの時間を美優を演じて過ごしている。

美優が康介のことを好きだったと言うことは、実は薄々知っていた。
でも、知らないふりをしていた。わざわざ女同士の貴重な友情を壊すほど、お互いバカじゃなかった。
今や、あたしは康介になった。康介は美優になった。

「気持ちは身体に引っ張られる」──そんなことがあの日以降、よく分かってきた。康介になったあたしは、美優になった康介に対して恋愛感情がない。確かに美優は美人だ。そして、中に入っているのはあんなに好きだったはずの康介だ。でも、「愛しい」という気持ちは、あたしの場合は、残念だけど全く感じなかった。

「ねぇ結衣、今日はどうするの」

康介が美優の声帯を使って、発情期のメス猫みたいな甘ったるい声を出す。康介はあたしのことがまだ好きなのだ。でもそれは、康介の元の感情とは別の感情なのだろう。
康介は美優の身体に入り、美優の気持ちに引っ張られているだけだ。
美優は康介のことが好きだった。今の康介が今のあたしに抱いている恋愛感情は、かつて美優が康介に感じていたものなのだ。

「とりあえず、着替えていい?」

と、あたしは言った。美優の顔をした康介は頷く。あたしはクローゼットから、あたしが選んでおいた「スカート」や「ブラウス」、それに「女の子の下着」を取り出し、おもむろに着始める。手際よくストッキングを、すっかり男っぽくなってしまった脚にスルスルと穿く。軽くメイクをする。そして昔のあたしみたいな髪型のウィッグを被る。
そう、あたしはこうして、女に戻る。「女装」をしている間だけは、自分を取り戻すことができるように感じていた。結衣でいられるような気がした。

「どう?あたし可愛い?」
「う、うん!元の結衣みたいな感じでかわいいよ」
「……やめてよ、そういう見え透いたお世辞」
「ほ、本当だってば!」

康介の身体になってからというもの、女装するために筋力をなるべく落とすようにはしているが、元々水泳部だった康介が鍛えていた身体だ。体格が全然違うのだからそんなに簡単にあたしみたいになるわけがない。

それにしても。
彼氏は元の自分の身体をあたしに使われ、こんな風に化粧して女装されて何を思っているのだろう?

「結衣……」
「なに?美優」
「こ、今度さ、女子会しよう。あたし彼氏のこととか知りたいし」

あはは、とあたしは笑った。そうきたか。

「それさ、今日本物の美優も同じようなこと言ってたわ。もうだいぶ本物の美優に近づいてきたんじゃない?」
「ほ、ほんと?うれしい……あれ、うれしいはずなのに、なんであたし泣いてんだろ?おかしいな」

康介は泣きじゃくっていた。元の美優は気が強くて、こういう風にメソメソしたりしない。あたしはいつも励まされる側だった。それが今は、中身が男だったとは考えられないぐらい、女の子だ。

「美優」の姿をしたそれは、泣きじゃくりながら言った。

「あたし……俺、なんかどんどん気持ちが女の子になってるみたいで……結衣、俺どうしたらいいのかな?でも結衣のことはまだ変わらず好きなんだよ、なあ結衣」
「『美優』、口調。男みたいだよ。本当にもう来るのやめるよ」

脅しではなく本気だった。男口調で話す「美優」には用はなかった。

「……ごめんなさい、ごめんなさい。あたしは美優です、ずっと唯香の友達でいたいの、友達でいいから」

泣きながらあたしの腕にすがる康介を見ながら、女装したあたしはガチガチにボッキしていた。いつも強気だった「美優」を泣かせているという倒錯した征服感があたしを支配していた。
ねえ康介、男って女の子にどうしてもムラムラしちゃうんだね。たとえそんなに好きじゃなくても。

いつしかあたしの股間の膨らみは、スカート越しでも充分わかるぐらいになっていた。康介は泣き止み、その膨らみをじっと物欲しそうに見つめる。
あたしは無言でスカートをめくり、せっかく穿いたストッキングを下ろす。今のあたしにはあまりにも窮屈になってしまったショーツを下ろして勃起したアレを露出させる。

「ほら、舐めていいよ」

美優の身体の彼氏にあたしのチ◯ポを咥えさせ、舐めさせる。康介は涙を軽く手でぬぐうと、ひざまずき、嬉しそうに赤い舌をチロチロと出しながら舐めはじめる。

挿し絵1

「あっ……それ、気持ちいい……よくあんた、元男なのに自分のち◯ぽそんなに美味しそうに舐められるよね」

かつてあたしの彼氏だったものは上目遣いであたしを見上げて、目線を細めて媚びた笑いを向ける。だって、結衣のこと、好きだから。その目はそう言っているように見えた。
康介、それはあなたの元の感情じゃなく、美優のあなた自身に対する感情なのよ、と言いたいのをいつも堪える。

じゅぽっ、じゅぽっ、という湿った音が部屋に響く。元自分の身体だけあって、康介はあたしの身体のどこが気持ちいいか全部知り尽くした動きをしている。あたしはこの時ばかりは、スカートを持ち上げながら感じるしかない。

「あっ、もういきそう……」

あたしがそう言うと、康介は一瞬少し怯えたような目をして、反射的に口をあたしのチ◯ポから外してしまう。あたしはそのまま、精液をドクドクと美優の顔じゅうにぶちまけた。

「あーあ、何やってんの?いつもちゃんとごっくんしろって言ってるでしょ」
「ご、ごめんなさい……まだあたし慣れなくて」

流石に元自分の精子を口に入れるのに抵抗があるのだろうか。でも、顔にぶちまけられるのもそれはそれで屈辱だとあたしは思うけど。

あたしは近くにあったティッシュで軽く先端を拭き取ると、メイクを落とし、再び着ていたスーツに着替えはじめた。

「結衣、今日は挿れてくれないの?」
「あー、今日は疲れたから」
「……うん」

あんたも元男だったらわかるでしょ。男は射精したら好きでもない女のことなんてどうでも良くなっちゃうって。
きっと康介は欲求不満で、あたしのことを思いながら美優の身体を使ってオナニーでもするのだろう。そしてどんどん美優に染まっていく。

「ま、また来てね、絶対……今度はあたし、もっとうまくやるから。もっと美優らしく……あたしらしく振舞うから」
「わかってる、愛してるよ」

と言って額にキスすると、康介はぱあっと美優の顔を明るくする。
こうしておけば、まあ大丈夫だ。もちろん、愛してるなんて真っ赤な嘘だけど。康介自身もきっと、気づいていて騙されたフリをしてる。

「また、あたしのところに戻って来て欲しいの!あたしずっと待ってるから!結衣、愛してるの!」

気が向いたらね、とあたしは答える。
あたしはあたしの家に帰ることにした。



家に帰ると「あたし」が先に帰っている。今日もまた元のあたしなら着なかったような、エッチな下着だけを着ている。

「結衣ちゃんおかえり。さみしかったよお、なんつって」

あたしの顔をニヤニヤと歪めながら、そいつは言う。

「結衣ちゃん、この下着さぁ、似合うだろ?こういうのもそそるだろ?結衣ちゃん、なに着ても似合うよな、エッチな身体になれて俺も嬉しいよ、結衣ちゃんになれてから毎日楽しいよ、うひひ」

あたしの身体には、職場であたしが最も嫌悪していた上司のシモザワが入っていた。
下品なことばかり言うので職場でも嫌われていた男で、あの年で結婚もしていなかった。

シモザワがあたしの身体に入っている──その事を知った時は、発狂しそうなほどショックだった。でも、実際会ってみたら、愛おしいと言う気持ちが溢れてしまった。彼氏の康介が、あたしのことを愛していた結果だ。身体に引っ張られて、中身がシモザワだと頭では分かっているのに、あの日、最初にあたしの顔を見たとき、反射的に思わず抱きしめてしまったほどだ。

「今日もおれ、結衣ちゃんの性感帯開発してたよ」

ニヤニヤとあたしの姿をしたシモザワが言う。愛おしいのがくやしい。中身は元々あんなに嫌悪していたあのオッサンだって分かっているのに、この康介の身体があたしのことを好きすぎて、興奮してしまう。
シモザワもシモザワで、あたしの体になってからと言うもの、康介の身体になったあたしを見るとどうしようもなく胸がキュンキュンしてくるらしい。

「結衣ちゃんには会社でエッチなこと言ってからかってれば十分だったんだけどさ、なんでだろう、今は結衣ちゃんのことひとりじめしたいっていう気持ちが湧いてきちゃうんだよ、あふっ、やわらけー、気持ちいい」

シモザワはあたしの胸を揉みながら言う。

「今日も結衣ちゃんのち◯ぽ挿れられるのを想像しながら何度もイっちゃったよ、ふふふ」

外見上は元のカップルのように見えるあたしたちだが、彼氏の康介の方に入っているのはあたしで、あたしの体にはあたしがあれほど毛嫌いしていた50代のオッサンがはいっているのだ。それでも、感情面では悔しいけど好きと言う気持ちをおさえきれなかった。

笑いながらシモザワはあたしの身体でポーズをとって放屁した。あたりに音が響く。

「あっ、くせっ!うひひ」

あたしの姿でそんなことをしないでほしい、と理性はあたしに訴えかける。その一方で感情は「飾らない君も可愛くて素敵」と押さえつける。恋は盲目とはよく言ったものだ。

「オナラもくせぇし、結衣ちゃんでもウ●コはするんだよなあ。はじめて結衣ちゃんの身体でウ●コした時のこと今でも思い出すよ、1時間は結衣ちゃんのウ●コの臭い嗅いでたもん俺、けつ拭くのも忘れてさ!ギャハハ!」

何回めかのシモザワの同じネタ。よほど嬉しかったのだろう。それを聞き流しながらあたしは、「あたし」のエロい下着に包まれた身体を見て興奮していた。

「なんだぁ、もしかしてもうしたいのか?いやぁ、モテる女はつらいねぇ、うっふん」

シモザワはクネクネしながら言う。姿かたちは完璧な女の子なのに、まるで女のフリをした男みたいだ。

「まあ、俺ももうおまんこ濡れ濡れだからさ、シャワーもいいよな、早くやろうぜ」

アイツはあたしの顔で下卑た笑いを浮かべた。当たり前だが元のシモザワと同じような笑い方で、あたしはその笑い方が心底生理的に嫌いだったのだが、今ではそれすら愛おしく感じてしまう。あばたもえくぼ、とはよく言ったものだ。



ベッドに直行する。康介とあたしが、何回もいっしょに寝たベッド。そこで康介になったあたしと、あたしになったシモザワは、この一年で数え切れないほどセックスしていた。

無言であたしは元自分の身体を押さえつけながら突き上げた。身体の相性も抜群にいい。美優と違って。それは本当に腹立たしい。

「あんっ!今日溜まってるんか?激しいわ、嫌いじゃないけどな、ひぃ、ひぃっ」

あたしの身体を火照らせながら、目を潤ませ快感に溺れながら、俺をもっとめちゃめちゃにしてくれぇ、もっと突いてくれえ、などとよがっている。

挿し絵2

あたしは目の前の女にさらに快感を与え続ける。この女の子のことが愛おしくて仕方ない。守りたい。そんな感情が身体の奥底から湧き出てきて、あたしは心底、あたしのことを好きだった康介のことを恨む。

「あっ、あっ、あっ、やだ、結衣イっちゃう、イっちゃうのおお !!」

シモザワは、絶頂の時だけ女言葉になる。
あたしの身体がそうするとより興奮するのを知ってるからだ。
あんたは結衣じゃないでしょ。あたしが結衣なのに。頭ではそう思うが、康介の身体は反応してしまう。あたしの膣内であたしはペニスをもっと固くさせた。あたしの膣がきゅうっ、と締まって、ぴくぴくと身体全体が震える。

「ひぃ、ひぃ、イったぁ〜!」

プシャアァとあたしの身体はお漏らしする。これも毎回のことだ。元のあたしだったらこんな事絶対しないのに、いつも「結衣ちゃんの身体、イったあとコントロール効かなくなっちゃうんだよ」とか言われる。そんなこと絶対ないのに。

はあ、はあ、と荒い息をつきながら、あたしの姿をした中年男が全裸で仰向けになる。
ふわっ、とあたしの汗のにおいがする。

ああ、本当にこのにおいは好きだ。あたしって、こんなに良いにおいだったなんて、女の時は感じなかった。康介の身体になったあたしが、康介の鼻腔で感じるあたしのにおいが特別なのだろう、と思う。
身体の生理的な幸福感には抗えない。そのにおいを発しているあたしの中身が中年男だとしても。

あの日以来、あたしたちの生活は、社会は、ずいぶんと変わってしまった。

あたしの顔をした変態中年男。あたしの大嫌いだった上司。それが今や、女になって、目を潤ませ、ニヤニヤと楽しそうに笑いながらであたしに話しかける。

「結衣ちゃん、子供作ろうね、俺、ちゃんと産むからさ、うひひ。結衣ちゃんの身体で、結衣ちゃんの子宮で、結衣ちゃんのザーメンを中に思いっきりぶちまけられてさ、結衣ちゃんの子供を産むからさ。だからもう一戦しようよ、俺のまんこにもっと結衣ちゃんのザーメン注いでよぉ」

あたしはまた自分が勃起するのを感じながら、愛おしさと憎らしさであたしを強く抱きしめた。

(文:皆月ななな)
(イラスト:野苺さくらさん)

こちらの作品は皆月ななな支援所 投げ銭プラン限定企画「投げ銭プランの方限定でSSリクエストを募集します」により飛龍さんのリクエストを頂き作成しました。

妹の彼氏に憑依するつもりだったブラコンの兄が 間違って妹に憑依するお話

とうとう、この日が来てしまった。
「お兄ちゃん、紹介するね?航平くんです」
「はじめまして。悠香の彼氏の航平です」
大学1年生になった妹の悠香が俺の前に初めて連れてきた彼氏。航平、という男は悠香をちらりと見たあと、俺に軽く挨拶した。
いかにもそいつはモテそうな雰囲気を醸し出したイケメンで、表情一つ変えないクールな表情とそっけない挨拶もなんとなく似合ってしまうのが腹立たしい。
それにしても、可愛い俺の妹を呼び捨てか。いい度胸してるなお前。
「よろしく、航平くん。兄の直人です」
俺は内心はらわたが煮えくり返るような感情を感じながら、表面上は冷静に笑顔を作った。
悠香も少し困ったような笑顔で小さく笑うと、その男の方をちらりと見ながら、恥ずかしそうに言った。
「じゃ、じゃあ航平……航平くん。私の部屋にあがろうか……」
「おう」
普段はお互い名前を呼び捨てにしていることが窺える悠香の態度に、またもどかしいものを感じた。

俺と悠香は結構年の離れた兄妹で、俺も悠香も小さい頃に両親は他界してしまった。
その後は祖父母に育てられた俺と悠香だったが、俺はその頃から悠香のことを守ってきた。
俺が兄という立場から特別な目で見てしまう、というのを差し引いても、悠香は可愛い。
くりくりとした大きな目。艷やかな黒髪。綺麗な肌。外見だけではない。真面目で素直で優しい性格。
それに加えて、最近は兄の俺からみてもその……身体つきが女らしくなってきたと思っていた。
客観的に見て、悠香はかなりモテると思う。
だからこそ、俺がこれまで「悪い虫」がつかないように守ってきたというのに……。
中高は女子校だった悠香が共学の大学に行ってからしばらくは彼氏ができず、安心していたのもつかの間。
気がつけばこの航平という男が現れ、俺の悠香をかっさらっていったのだ。
しかも、悠香から告白したという。
……そんな事があり得るわけがない。
明らかに、悠香はこの航平とかいうイケメンに騙されているのだ。
悠香を盗られてたまるか!
階段を上がっていく二人の後ろ姿を睨みつけながら、俺は決意を新たにした。

「そういう時のために用意したのが、これなんだよな……」
自分の部屋に戻った俺は厳重に部屋に鍵をかけ、つぶやいた。
怪しげな通販サイトで見つけた「憑依薬」。1時間だけ他人に憑依することができるというものだ。
最初は半信半疑だったが、ダメ元ということもある。俺も噂だけは知っていたので、もしかすると本当かもしれない。
結構な値段がしたが、そこは社会人パワー。悠香のためを思えば金など取るに足らないことだ。
俺の計画はこうだ。この憑依薬を使い、悠香と一緒にいる航平に憑依する。
そして、航平の身体を使って悠香に嫌われるようなことをしまくってやるのだ。
例えば……二股、いや三股していると悠香に向かって言うとか……悠香を傷つけるかもしれないが、こっぴどく悠香を振るとか…… 航平の身体で、わざとおもらしして泣くとかもいいかもしれない……。
俺はほくそ笑みながら、ドリンク剤のような外見をした憑依薬を一気に飲み干した。ドロっとした甘いヨーグルトのような味が口の中に広がった。

気がつくと、俺は空中から俺の事を見下ろしていた。おそらく、今俺は俺の身体から抜け出し、魂だけになっているのだろう。手を見てみようとしたが、自分の身体が見えることはない。そこに確かに自分の身体があるような「感覚」だけがそこにあった。
(やっぱり、本物だったのか……)と俺は呟いたが、その声が俺の耳に入ることはなかった。
自分では声を発しているつもりなのだが、霊体?幽体?ではその声が空気を震わせることはない、ということなのだろう。
おっと、そんなことを考えている暇はない。早く悠香の部屋に行かなければ。あいつに悠香を奪われる前に!
確か泳ぐような感じで空気中を進んでいくんだったよな。
俺は憑依薬についていた説明書に書いてあったとおり、平泳ぎのようにしながら二回まで上っていった。
あとは、あいつの――航平の身体に幽体ごと入り込めば憑依ができるはずだ。

悠香の部屋に入ると、悠香とあいつは悠香のベッドに並んで腰掛けていた。
悠香は真っ赤になってうつむいていて、一言も発しない。
航平はといえば、そんな悠香のことをちらりとも見ず、遠くの方を眺めるような目つきをしている。
(この調子だと、まだ何もしてないな)
俺は少しホッとした。
しばらく黙りこくったあと、悠香がやっとのことで口を開いた。
「ご、ごめんね航平!そういえば飲み物とか飲むよね?」
「そういえば、少し喉乾いたかも」
「お茶、私の冷蔵庫にあるから……」
そう言いながら、悠香は立ち上がって部屋用の小さな冷蔵庫を開ける。
「あっ……」
小さく悠香が声をあげる。
「ごめん航平……ペットボトル、1本しか無くて……飲んでいいからこれ!私は大丈夫……」
そういうとペットボトルに入ったお茶を差し出す悠香。
本当にいい子だな悠香は……という気持ちと、そんな奴に優しくするな!という気持ちが複雑に絡み合う俺。
そんな俺の気持ちも知らずに、
「ああ」
というと、あいつはお茶のペットボトルを開けると、少し飲んだ後、悠香にペットボトルを渡した。
「あとは飲んでいい」
「え!?」(え!?)
悠香と俺は同時に声をあげた。まあ、悠香には俺の声は聞こえていないのだが。
(それじゃ、間接キスになっちゃうじゃんか!悠香、よせ!)
俺は悠香に聞こえないのも、幽体になっているのも忘れてまじまじとペットボトルを見つめる悠香のほうに突進したのだが……
俺は勢い余って、魂ごと悠香にぶつかってしまったのだった。

「悠香、おい悠香……起きろよ、どうした?」
俺が目を覚ますと、あいつが俺を心配そうに軽く揺さぶっているところだった。
そうだ、そういえば悠香は!?
そう思い俺がガバッと身を起こすと、髪の毛がふわっ、と俺の耳元を柔らかくくすぐった。
「あれ?ひゃぁっ!?」

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髪の毛が長い。その違和感に思わず声を出したが、その声もまた女みたいな高い声が出て、俺は驚いてまた変な声を出した。
「悠香、大丈夫か?」
そう言うあいつの方を見ると、目線が俺より高い。確か俺のほうが少し身長が高かったはずなのだが……って、俺が縮んでる?
「まさか……」
俺はまた女のような声を出しながら顔面蒼白になった。
手を見る。
霊体ではない。
かといって俺の手でもない。
白くて細い……柔らかい肉付きの手のひらをした……女の子の手だ。爪には薄いマニキュアが塗られていた。
自分の身体を見る。白くてふわふわとしたニットを押し上げる胸に隠れて、下半身が見づらい……
が、さっき妹が履いていたはずのロングスカートを俺が履いているのがわかった。

もしかしなくても、これは。

俺、悠香になっちゃったのか……?
声に出さずに察すると、俺は恐る恐るあいつの方を見た。
あいつは見るからに怪訝そうな顔をしているが、まさか悠香の実の兄が中に入っているなんて絶対気づくはずがない。
こいつの身体に乗り移って悠香に嫌われるつもりだったが、こうなってはしょうがない。

そう冷静になった俺は、計画を変更することにした。
悠香の身体を使って……悠香に成りすまして、こいつが二度と悠香の前に現れないぐらい、こっぴどく振ってやるしかない。
「なっ、なんでもないよ、航平くん♪」
俺は精一杯女に見えるようにしなを作りながら言った。
「航平くんって……悠香、本当に大丈夫か?」
しまった。悠香はこいつのこと、呼び捨てしてるんだった。
「こ、航平!航平航平!うん、全然大丈夫!な、なんか喉乾いちゃったな……」
そうあいつの名前を連呼して言い直すと、誤魔化しついでにちょうど手元にあったペットボトルのお茶の蓋を開けると、口をつけ一気にお茶を流し込み、そしてこれがさっき俺が悠香に憑依してまで全力で航平との間接キスを止めたお茶であったことを思い出した。
「ぶふぁっ!?」
一気にお茶を噴き出す俺。その拍子にペットボトルに入っていたお茶も取り落とす。
「あっ」
一瞬の静寂のあと、残ったのはニットとスカートをお茶ですっかりグショグショに濡らして呆然とする俺と、同じく呆然と俺を見つめる航平だった。
「ふふっ……」
しばらく目を見合わせた後、航平が堪らないと言うようにクールな顔を歪ませて笑う。
「な、何がおかしいんだよ!!」
馬鹿にされたような気がして、思わず俺は言う。
「すまん。いや、悠香って結構天然なんだなって思ってさ。真面目なだけかと思ってたけど、イメージちょっと変わったかも」
「い、いや!普段の悠香はこうじゃないから!」
俺はとっさに反論してからしまったと思う。
「わ、私は普段はこんな感じじゃない……のよ?」
「はは、普段とは違う感じで可愛いじゃん」
「え」
いかん。
これ、ちょっといい感じになっちゃってないか?
それはまずい。計画通りにやらなくては。
「こ、航平なんか嫌いだから!嫌い嫌い嫌い!!」
俺はムキになって嫌いと連呼する。これは本心だ。
航平は笑いながら言った。
「照れてんのか?そういうところも可愛い」
「なっ……」
何なのこいつ。俺の悠香に向かって……可愛いのは事実だけど……。
「そう言う航平だって、クールかと思ってたらそうやってからかって……イケメンだからって全てが許されると思うなよ!」
怒りで航平のほうを睨みつける。
「……ふーん、俺のことそういう風に見てたんだ」
航平も俺の方をじっと見てくる。
何だ?こいつ俺とやる気か?そう思った俺は、航平から目をそらすことなくじっと見返してやった。
航平の顔がだんだん近づいてくる。近づいて???
気づいたときには俺は悠香の身体で航平にキスされていた。
「――――ッ!?」
声にならない声を出して抵抗する俺だったが、ことのほかがっしりと頭を後ろで掴まれていて、悠香の身体ではほとんど抵抗になっていない。
悠香の口に舌が入ってきたところで俺はやっとのことで航平の身体を両手で押しのける。
「ば、馬鹿!?何してんの!?」
俺は口を拭きながら言う。
って、さっき間接キスも恥ずかしがってたし、これ、悠香のファーストキスだったんじゃ……。

「……だって、そういう雰囲気だったじゃん、今」
「違う!俺は睨んでたの!本当に嫌いなの!くちゅん」
俺は我を忘れて否定しながらくしゃみをしてしまう。
うう、さっきお茶で全身びしょ濡れになって、ちょっと冷えたような……悠香の身体に風邪を引かせたら大変だし、ここは……
「大丈夫か?風邪引くから一回着替えたらいいんじゃないか?」
「う、うるさいなあ!わかってる!」
先に言われてしまった。
「俺、部屋出て待ってるからさ。着替えたら声かけてよ」
「当たり前だ!出てけ!覗くなよ!」
「ははは、はいはい。本当、今日の悠香は面白いな」

「うう」
俺は下着姿で姿見の前に立ち、うめく。
まさか俺が、妹として着替えをすることになるとは……悠香、すまん。
「ブラジャーまで濡れてるよ……これ、どうやって取るんだ?手が……」
と呟きながら、手を後ろに、鏡を見ながらブラのホックに手をかける俺。
俺の身体と違い、予想外に身体が柔らかく、結構簡単に手が届いてしまう。
「んっ……これを外すのか」
妹の声で呟きながら、俺は妙な背徳感に悩まされながら自分の、悠香のブラを外す。
「おお……」
鏡に映るのは、まじまじと自分の身体を見つめる俺の妹、悠香。
白く、うっすらと自分の膨らんだ胸に血管が走っているのがわかる。
「俺の胸……悠香の、胸」
俺は呟きながら、そっと横から触ってみる。
柔らかく、みずみずしい感覚が手から伝わってくる。同時に小さな手で触られている感覚も伝わってくる。
どちらも男のときには味わうことのなかった感覚だ。
俺は自分の――悠香の身体の鼓動が高まるのを感じていた。
航平が待っているであろう、ドアの向こう側をちらりと見る。
「ちょ、ちょっとだけなら……」
俺はゆっくりと、今は自分のものになった悠香の乳房に触れていく。
「なんか、変な感じ……」
男のときにはなかったものをゆっくりと揉みつつ、俺はぷっくりと膨れてきた乳首にも指をかける。
「ふぅっ……!」
押し殺した悠香の声が俺の喉から発せられる。
やば、これ、気持ちいい。
両の人差し指と親指の腹で左右の乳首を軽く摘んだり弄ったりしながら、俺は興奮が次第に高まり、身体が内側から熱くなるのを感じていた。
(こ、こんなこと……妹の、悠香の身体でしてちゃダメなのにっ……)
ダメなのに、止められない。
俺は上気する悠香の顔を鏡で見ながら、自分の勃起しているであろうアレをシゴくため、 乳首をいじっていた右手をショーツの中へと潜らせた。
「……?」
俺が思った位置には自分のイチモツはなく、うっすらと茂みが広がるばかりだった。そこではた、と気づく。
(あ、そうか、俺、今女だったんだ……うわっ!?)
股間をまさぐっていた指が、何かぬるっとしたものに触れる。
一瞬、気づかないうちに射精したのか?と思うが、今度はすぐに「自分はいま女だ」ということを思い出す。
(悠香のマ○コ、濡れてる……。俺が興奮して濡らしてるんだ……)
ヌルヌルした分泌液を、擦り付けるように股間全体に引き伸ばしていく。
「自分が悠香になって、悠香の身体を弄って気持ちよくなっている」という背徳感が、快感を加速させていくのがわかった。
(あ、気持ちいい……かも……)
「ひうっ!?」
スリスリと股間をまさぐっていたが、俺は突然の快感に小さく息を飲む。
(これ、クリト○スだよな……気持ちいい……)
俺は今指が当たった悠香のクリ○リスを、悠香の指を使って弄りながら、倒錯的な興奮を高めていった。
弄るスピードは小刻みに、一定のリズムで快感物質を俺の脳に送り届けていく。
左手で弄っている乳首も、勃起して硬くなっているのがわかる。
(あ、ヤバ、な、なにかくるっ……!)
「ひぅっ!」
男のイくときのような、だがもっと強い快感が絶頂に達し、俺の全身を駆け巡る。俺は初めての女のイく感覚に、頭が真っ白になるのを感じた。

ショーツの中に右手を入れたままベッドに寝そべり、しばらく、ぼんやりしていた。
「はぁ……はあ……はぁ………」
俺、悠香の身体でイッちゃったんだ……。
男のオナニーとは違う意味での罪悪感を感じながら、俺はふと横を向いた。そして――固まった。
ベッドの横にはいつのまにか航平が立っていた。
「……い、いつからそこに?」
「……悠香が下着の中に手を入れだしたところぐらいから、かな」
それは、自分のオナニーのほぼ一部始終を航平に見られていたことを意味していた。
「覗くなって言ったじゃん!」
「そう言われても、遅かったしさ」
「で、でもっ……わ、忘れろ!今見たこと全部忘れろ!きゃぁっ!?」
急に航平が覆いかぶさってきて、悠香の身体になっている俺は為す術なく押し倒されてしまう。
「忘れろとか言われても困るし……そんなに欲求不満なんだったら、俺とすればいいじゃん?」
「だっ、ダメだって!それは許さない!コレは悠香のっ……うぷっ!?」
航平に唇を塞がれ、さっきよりも濃厚に舌を絡みつかせ、舐め回される。
(や、やめろっ!悠香を汚すな!俺は兄として、悠香をっ……!)
抵抗しなきゃいけないはずなのに、なぜか力がはいらない。むしろ。
(お、俺っ、こいつのキスで気持ちよくなっちゃってるぅ……)
目がトロン、として、惚けたようになっているのが自分でもわかる。
(もしかして、悠香の身体に俺の精神が引っ張られてきてる……!?)
そうしている間に、穿いていた下着を航平が脱がしにかかる。
「だ、だめだってぇ……」
「……なら、もうちょい抵抗したらいいんじゃないか?うわ、糸引いてる。超濡れてんじゃん」
俺はキスされてからぼうっとなってしまい、下着を脱がされるままになっていた。
自分でもさっきより濡れてきているのがわかるぐらいだが、改めて人から言われると恥ずかしい。
足を拡げられ、悠香の恥ずかしい部分がより露わになる。
「み、見るなぁっ!見ないで!」
「大丈夫だって。悠香、かわいいよ」
「知ってる!それは知ってるからぁ!見るなぁ!」
錯乱した俺は身悶えしながら連呼するが、航平に手首を掴まれ固定されてしまう。
いつの間にか航平も下着をおろし、下半身を露出させている。
「お、俺のより大きい……やめろぉ!本当にやめて!マジで!」
「……何か言ったか?もう準備万端みたいだし、挿れるぞ、悠香」
ずぶっ、と異物が俺の、悠香の膣に挿入されていき、膣壁を拡げていくのを感じた。
と共に、それに合わせて猛烈な痛みが俺を襲った。
「いた、痛い!!いたああああ!」
びっくりするように航平が俺の顔を見る。
「……悠香って、もしかして処女だったのか?」
「当たり前だぁ!よくもぉ……」
「……大丈夫。ゆっくり動くから」
そう言うと航平はゆっくりと前後しだした。
「悠香、どうだ?気持ちよくなってきた?」
「馬鹿っ、野郎っ、全然気持ちよくなんかっ……なっ……い……!」
そう言いながら俺は、さっきよりは痛みが和らいでいくのを感じていた。
痛みばかりだった部分が、徐々にヌルヌルとした結合の感覚に変わっていく。
「あっ……んっ……うぁぁっ……」
俺、今妹の身体で妹の彼氏に抱かれて感じちゃってるんだ。ごめん、悠香。
「気持ちよくなんかないっ……あっ……んっ……」
俺は特に聞かれていないのに強がりを言うことでなんとか自分を保ちながら、自然に漏れる悩ましげな声を抑えきれなかった。
「さっきみたいに、クリト○ス弄ってやるよ」
そう言うと航平は俺の下半身に手を伸ばす。
「うぁっ!あっ!ああっ!」
俺はクリ○リスが触られるたびに、電流みたいに駆け上がってくる快感で思わず大きな声をあげていた。
いつしか俺は、自分でさっきのように自分の、悠香の乳房を揉みながら、快感を高めるのを止められなくなっていた。
「ま、またイッちゃう、航平っ、航平っ」
「悠香っ……俺もイくっ……」
さっきよりも強い感覚に、俺は目の前が真っ白く染まっていくのを感じた。
薄れ行く意識の中で、俺の腹に航平の精液と思しき、熱いものがかけられるのがわかった。

「それじゃ、お邪魔しました」
玄関先で、航平と悠香がやり取りする声が聞こえる。
「……うん。航平、また……」
「なんだ?さっきと違って大人しいじゃん」
「そ、それは……さっき、私どうかしてて……なんか、自分でするなんて、普段はそんなにしてなくて……」
「でも、たしかにしてただろ?」
「そ、そうなんだけどっ……記憶にはあるんだけど、あの時の私、私じゃないみたいな考え方だったの……自分のこと、大好きっていうか……」
「ナルシストなんじゃないの、悠香」
「そういうのじゃないのっ!もう、わかんないかな……それに、お兄ちゃんも居たから、今日は航平とするはずじゃなかったのに……バレちゃったかな……もう、何で今日しちゃったんだろ……」
「まあ、悠香の別の一面が見れて、俺は悠香のこと好きになったよ。また来るよ、悠香」
「……」

無言になった。きっと二人で見つめ合って、キスか何かしてるのかもしれない。
悠香の身体の憑依が解けて、本来の身体に戻った俺は自分の部屋で悶々としながらそれを聞いていた。
結果的には俺が悠香に成りすましてあいつと悠香の仲を引き裂くどころか、むしろ取り持つことになってしまったみたいだ。
どうやら憑依中にしたことや考えたことは、自分自身の意志でしたことだというふうに捉えてしまうみたいだな。

悶々としながら、俺はまた、例の怪しげな通販サイトを開いていた。
かなりいい値段するが、その分の価値はある。憑依薬をカートに放り込み、注文を完了する。

今度憑依するのは、もちろん――

最近の寄稿。

寄稿その1。
あむぁいおかし製作所さんのイラスト企画にて小品的に『正義の美少女 プリズムピンク』を寄稿しました。れいとうみかんさんにダークイラストを描いていただきました!
正義の美少女 プリズムピンク

寄稿その2。
TS解体新書さんのなりすましモノ祭りに『妹の彼氏に憑依するつもりだったブラコンの兄が間違って妹に憑依するお話』を寄稿しています。めた子さんとの合作!こちらはお祭りが終わったらこのBlogにもUPしておきますね。

鋭意執筆中のやつがありますので乞うご期待?

「TS風俗」で、俺が女になる側だったお話。

「『TS風俗』か……珍しさにつられてつい頼んでみてしまったが」
 ラブホテルの一室でそう語るのはリョウ。社会人になって金ができたのをいいことに、給料とボーナスの大半をつぎ込んでソープ、デリヘル、様々な女遊びを楽しんできた。一通り試してみて少し普通の遊びに飽きてきたこともあり、たまたまネットで見つけた「TS風俗」と銘打つサイトで申し込みをしてみたのだった。
 TS。リョウもなんとなく調べてみて知っている。「男が女になってしまう」というシチュエーションのことだ。
「そんなの現実にあるわけないしな……ま、よくあるプレイの一貫だろうけど、男勝りな女の子を抱いてみるのも面白いかな」
 そうつぶやいていると、部屋のノックの音がした。
「来たか。結構早かったな」
 リョウは手慣れた手つきでドアを開けると、そこには20代半ばから後半ぐらいの青年が立って微笑んでいた。
「えっと……」
 リョウは困ったような顔をした。部屋を間違えているのだろうか。俗に言う「イケメン」と言っても差し支えない容姿をした青年は微笑みながら言った。
「お待たせしました。『TS風俗』のジュンと申します」
「ああ……」
 リョウは察した。こういった風俗店では、初めての客の様子を確認するため「遊び方説明」と称して店の若い者を派遣し、その後に女の子がようやくお目見えするという形式の店がある。
 では、さっさと説明してもらうとするか。そう思っているとジュンと名乗る青年が言った。
「お名前は?」
「ああ……リョウです」
「リョウ『ちゃん』ですか。可愛い名前ですね」
「はぁ?」
 リョウは怪訝な顔でジュンの方を見た。こいつ、何のつもりだ?馬鹿にされているのか?抗議しようと口を開きかけると、その口をジュンの口が塞いだ。
「……!!!」
 男にキスされたという怒りの前に、意味不明な事態に陥っていることへの困惑と驚きが勝って、リョウは目を見開いたまましばし固まって、ジュンの舌が自分の唇、舌、歯茎を丁寧に舐めるのを感じていた。
「ぷはっ……ば、馬鹿!何するんだよ!!」
「すみません。リョウちゃんがあまりにも可愛いので、つい」
「俺はホモじゃない!」
「ホモ……?」
ジュンは微笑みながら少し首を傾げた。
「男と男が、き、キスなんてしたら完全ホモだろ!気持ち悪い!」
「……でもリョウちゃん、女の子ですよね??」
「はっ!?俺のどこが女の子に、見えるって……」
 そう言い終わらないうちに俺は絶句した。
 いつのまにか、目の前のジュンを見上げるような感じになっている。ジュンの身長が大きくなったのか。いや、違う。自分の身長が縮んでいるのだ。それどころか。
「な、なんで俺が女物の服を着てるんだ!?」
 会社帰りのリョウはさっきまで当然、男物のスーツを着ていたはずだ。それが今は女物のタイトスカートにフリルのついた白いシャツ、まるで新人のOLみたいな服を着ている。リョウは思った。手品か何かか?
「ご丁寧に、詰め物まで……」
「詰め物?たしかに大きい胸だけど、詰め物なんですか?」
「当たり前だ!この……」
 リョウはブラジャーを付けて締め付けられる感触を上半身から感じながら、中に入っている詰め物を取ろうとして、シャツを脱ぎ、ブラジャーを外す。ぷるん、という音がするかのようにリョウのたわわな胸が外気に晒され、震える。
「え?……ええ??」
「自分から脱いでくれたんですね。リョウちゃん、本当に大きくて綺麗なおっぱいですね」
 ジュンはそう言いながらリョウの乳首を軽くつまむ。
「ひゃぁん!」
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「感度も良好、と。じゃ、早速ベッドの方に行きましょうか」
 そう言いながらジュンは手慣れた手つきでリョウをベッドの方に追いやり、押し倒す。
「こ、こんな……俺はTS風俗に……」
「そうですよ、だからリョウちゃん、女の子になっちゃったんでしょ?」
「俺が女の子になるなんて、聞いてなっ……ひゃぅぅん」
 言い終わる前にジュンがリョウの乳首をぺろぺろと舐める。空いた手でリョウのもう一方の乳首をツンツンと刺激する。
「ひゃぁぁぁん、やめ、やめろぉ」
 言ってもまったく止める気配のないジュン。
「やば、あ、な、なんか来るぅっ!」
 リョウの白い肢体がうっすらと桜色に染まり、ヒクヒクと小さく小刻みに痙攣する。
「あらら、乳首だけでイッちゃったんですか?エッチな娘ですね……♡」
「うう……見るなぁ……」
 女として絶頂を迎えたのを見ず知らずの男に見られてしまったリョウは火照った顔を相手に見せまいと片手で顔を隠す。
「大丈夫ですよ。女の子の気持ちいいところ、これからが本番ですよ?」
「え、え、それって」
「さ、下も脱がせてあげますよ」
「ちょ、ちょっと!」
 するするとリョウが履いていたタイトスカートを脱がせていくジュン。フリルの付いた水色と黒の下着が露わになる。
「わぁ、可愛い下着ですね」
「お、俺が履いたわけじゃない!見るなぁ!脱がすなぁ!」
「ほら、大人しくしないと下着、破れちゃいますよ?」
 ゆっくりと下着を脱がせにかかるジュン。最初は下着を押さえて抵抗していたリョウだったが、観念したのか大人しくなる。
「……わぁ、本当に綺麗な身体ですね。興奮してきちゃいますよ」
「な、なんでこんなことに……恥ずかしい……」
 リョウは両手で真っ赤になった顔を覆い、秘部を足で必死に隠そうとする。
「リョウちゃん、ほら、こっち見てください」
「え……ひぃっ!?」
 リョウが顔を覆っていた手を恐る恐るどけると、そこにはよく見慣れた――と言っても「自分のモノではないモノ」をこんなに間近で見る機会は今までなかったが――男のモノがしっかりと勃起していた。
「リョウちゃんのエッチな身体見てたら、こんなになっちゃいました。大きいでしょ?」
「え、あ、やだ、怖い」
「今からこれがリョウちゃんの中に入っていきますからね~」
「嫌だ、そんな大きいの、入らない」
 自分が男だと言うことも忘れて涙目でイヤイヤをするリョウ。
「大丈夫ですよ。リョウちゃんの膣内は僕のモノが一番気持ちよく感じるように最適化されてますから。相性は100%、抜群です」
「や、やぁ、やめっ……うぁぁん!」
 ズブズブとリョウの中までジュンがゆっくりと挿入していく。リョウの股間から腹の内部にかけて、男だったときには感じたことのない異物感が広がっていく。
「あぁ……全部入りました。嫌だとか言って、下の方は受け入れ体制万全ですけど?リョウちゃんの中、すごくトロトロで気持ちいいです」
「う、嘘だ、そ、そんなこと……」
「ほら、挿れてるそばから溢れてきてますよ、エッチなお汁が」
 ジュンがリョウの目の前に、つまんだ指を持ってきてゆっくりと親指と人差し指を開く。ネバネバとした透明な液が、ゆっくりと糸を引いた。
「お、俺、男なのに」
「男だったらこんなエッチなお汁、沢山出しませんよ~」
 ジュンが笑いながら言うと、ふと優しい顔になって続ける。
「大丈夫ですよ、リョウさん。僕、優しくしますから。女の子の気持ちよさ、身体中で感じちゃってください♪じゃ、動きます」
「そんな、あ、あぁぁぁん!ぁぁん!あん!」
 言うか言わないかのうちに、ゆっくりとした動きでジュンが前後への抽送を始める。ジュンが中で動くのに合わせて、膣内のあらゆる部分が刺激されて快感へと昇華されていく。これまで感じたことのない快感がリョウの中を支配し、リョウは自分でも知らないうちに女の嬌声をあげていた。
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「リョウちゃん、どうですか、気持ちいいですか?」
 ゆっくりと前後に動きながら、ジュンが優しい声で言う。
「あっ、あぁぁん、うん、あっ、きもちいい、きもちいい」
「そうですか、気持ちいいんですね……じゃあ、もっと気持ちよくしてあげます」
「ひゃぁぁ、あああん!それ、やばい、からぁ!」
「わかりますか?今触ってるのが、リョウちゃんのクリトリスですよ」
「ひゅごい、おとこなのに、くりとりすきもちいいよぉっ、あぁぁ、あん」
「今は女の子なんですよ……♡」
 ジュンは女の身体を知り尽くしている、とでも言った調子で、前後に動きながら優しくリョウのクリトリスをこね回す。
「これなにっ、すごいっ、あぁぁんっ、またイキそうっ、やばいよぉっ」
「イッていいんですよ、リョウちゃん♪……僕もイキそうなんで、中に出しますね♡」
「えっ、あぁぁん、なか、なかはだめ、赤ちゃんできちゃうから、ぁああっ、あ、あぁあん!」
 ジュンのモノが自分の中で脈打ち、ドクドクと自分の中に熱い精液が注がれていくのを感じながら、 リョウは頭の中が快感で埋め尽くされ、真っ白になっていった。



「どうでしたか、リョウちゃん?初めての女の子エッチは?」
「う、うん……すごかった……」
 自分の乱れる様子を思い出して赤くなりながら、リョウはジュンの胸の中に抱かれていた。
「嬉しいです。リョウちゃん感じやすいみたいですね♪最後、気を失っちゃうなんて」
「そ、それはジュンさんが上手くて……」
「リョウちゃんの中が気持ちよかったから、頑張っちゃいましたよ♡」
「あ、ありがと……う……?」
「あはは。随分素直になりましたね?」
「うう……」



 シャワーを浴びて、服を着たところでジュンが言った。
「それじゃ、そろそろ時間ですね。本日はありがとうございました」
「ね、ねえ、ジュンさん……」
「何でしょう?」
 リョウは言い出しにくそうにしながら、意を決したように言う。
「わ、『私』、……本当にジュンさんのこと、好きになっちゃったみたいで……」
「……ふふ、すっかり女の子『みたい』ですね?」
 リョウは一瞬びっくりしたような顔をしたあと、軽くジュンを睨みつける。
「誤魔化さないで!……また会ってくれますか?」
「うん、また会おう♪僕の方も、本当に好きになっちゃうかも」
 そう言って、よしよしとリョウの頭を撫でるジュン。
「……じゃあ」
「うん?」
「ジュンさん、もう一回だけキスして……」
「もちろん」
「嬉しい。んっ……」
 最初のキスとは違う味の濃厚なキスに、リョウも舌を絡ませて応戦する。
 お互い唇を離すと、リョウが言った。
「じゃ、また会えるのを楽しみにしてるね」
「……うん!絶対またお願いするから……」



 ドアが締まって、先ほどのキスの味を確認しようとしたところで、
「あ、元に……戻ってる」
 リョウは元の男物のスーツを着ている自分に気づく。
「そっか、私……じゃない。俺……男だったな」
 ふーっ、と一息ついて、帰り支度を始めながら、リョウが誰に言うでもなく呟いた。
「また……女になってみたいかもな」
 その後リョウがTS風俗に足繁く通うようになるのはまた別のお話。



 一方のジュン。帰り道であたりを確認する。ジュンが短髪のはずの髪を、ふっ、と女性のようにかきあげるような仕草を見せると、たちまちのうちにジュンが変化を始め、一瞬でセクシーな美女へと変貌を遂げた。ジュンが呟くように言った。
「昔は私も、お客さんだったんだけどね……。TS風俗にハマって、気がついたらそのまま女の子として暮らしたいと思ってたんだよね。そうしたら店長から誘われて、TS風俗のお店の子として働き始めたんだっけ。……今度はまさか、普段は女の子、お仕事のときだけ男に戻って女の子を抱く側に回るなんて思ってもみなかったけど……たしかに、女の身体のことを知り尽くしている男だから、今日のリョウちゃんも気持ちよさそうだったなぁ……リョウちゃんも素質ありそうだったから、同じ道をたどるのかな?」
 ところで、あの店長は何者なんだろうか。ジュンは何度めかの同じ疑問を心の中で思ったが、それも一瞬のことだった。
「さて、折角手に入れた女の身体だもん、今日も気持ちよくなりますか……♡」
 そう言うと、ジュンは夜の闇へと消えていった。

変身のメリークリスマス

「……ああ、それにしても彼女が欲しい。クリスマス・イブ。世間では恋人たちが愛を深め、幸せな一日を過ごす日だというのに俺は親友の聖也と二人、することもなく俺の家でいつものようにゲームに興じていたのだった。男二人で気兼ねなく過ごすのもいつもなら悪くはないが、今宵だけは違う。ああ……彼女が欲しい」
「太一、変なナレーションみたいことをいきなり言うのをやめてもらっていいかな?」
「え!?いま俺、声に出てた!?」
「……ああ、彼女が欲しいという切実な思いの独白だったな」
 そう言うと聖也は、メガネ越しに俺の方を憐れむような目つきで見つめた。
「なっ、なんでお前がそういう目で見てくるんだよ!お前だって彼女いねーだろうが!」
「……まあ、今はそうなのだが」
 彼女いない歴=年齢でもちろん童貞の俺とは違って、聖也は痩せ型のイケメンメガネ男子、といった風貌で、一部の女子からは結構な人気があるというのを耳にしたことがある。それでも、元来から真面目な性格をしている聖也は「本当に信頼できる女性としか付き合わない」とかいう理由で、過去にも俺の知る限り1人しか付き合ったことのある女の子はいないはずだった。しかも「信頼できる女性」を探しておきながら、昔から人の言うことを信じ込みやすい性格をしているから、致命的に女を見る目がなかった。唯一聖也が付き合ったその女の子はどう考えても「遊んでいる」感じの風貌で、案の定付き合って一年でその女の子が二股、いや三股していることが発覚して夏に別れたばかりだったのだった。

 いや、今はそんなことはどうでもいい。俺は大きくため息をつくと、ゲームのコントローラーを放り投げてベッドに大の字に寝そべり、ジタバタと手足を動かした。
「ああ~~もう、彼女欲しい彼女欲しいよ、彼女が欲しい~~」
「駄々っ子みたいだな……。彼女を作って、何がしたいんだ?」
「贅沢は言わない……一緒にゲームやれればいい……あと……」
「……あと?」
「ちょっとオッパイ揉ませてくれるだけでいいから……」
「……」
「ああ、神様……サンタ様……一日でいいから彼女を俺にください……」
「女なら誰でもいいのか?」
「いや、できれば玲奈ちゃんみたいな感じがいい……」

 佐藤玲奈ちゃん。俺達の大学の語学クラスでよく見かける女の子で、学年は1つか2つ下、といったところだろうか。いつも口元に笑みを絶やさない少し垂れ目で小動物系のほんわか系美人だ。
 少しだけふんわりとカールのかかったセミロングの黒髪も魅力的だが、それよりも150センチ台の身長ながら、ニットの胸元を押し上げる2つの膨らみがクラスの男子の視線を釘付けにしていた。
 俺も例外ではなく彼女の容姿に見とれていたのだが、一度彼女と目が合ったときなどは、どぎまぎしてしまった。他の女子なら気持ち悪いものを見るような目線を投げ返してこようものを、俺と目が合って恥ずかしそうにはにかむ笑顔も玲奈ちゃんの性格の良さを表しているような気がしていた。

「玲奈ちゃんか……それは高望みしすぎでは……」
「そんなことないって!この前俺に笑いかけてくれたもん!」
「……うーむ」
 聖也は何か考え込んでいるようだった。時々聖也は俺に何か隠し事をしているのではないかと思うことがある。男同士の仲で水臭い。聖也はしばらく間を置いてこう言った。
「太一、すまん。用事を思い出した。今日はここで失礼する」
「……はぁっ!?ちょ、クリスマスを俺一人にする気かよ!?……はっ!さてはお前、本当は彼女がいて、これから彼女と性なる夜を迎えるのでは……」
「いや、そんなことはない……ないのだが、やはり今日はここで失礼する。……それで、お前が彼女としたいことは本当に一緒にゲームをやって、その……胸を揉むだけでいいんだな?」
「へっ?……あ、ああ……そうだよ」
「それで、玲奈ちゃんがお前の好みなんだよな?」
「そうだけど……そんなこと確認してどうするんだよ?」
「いや、聞いておくだけだ。……その願い、叶うといいな。それじゃ」
「ちょ、ちょっと!」

 聖也は有無を言わさず玄関で靴をさっさと履くと、俺の引き止める声も無視して帰ってしまった。
「薄情者……あんなやつ、絶交だ……」
 俺はベッドで再びうつ伏せに寝そべりながら枕を涙で濡らしていたが、いつの間にか眠ってしまったようだった。

***

「……ぱい、先輩!先輩!太一っ!」
 女の子が俺を呼ぶ声で目が覚めた。いかんいかん、眠ってしまったようだ。って、女の子?
 寝ぼけまなこで横を見て、俺は驚愕で目を見開いた。すぐに身を起こし、ベッドにそのまま正座する。
「れ、玲奈……いや、佐藤さん!?」
 いつも遠くから見つめるだけで話しかけたことなど一度もない。玲奈ちゃん――佐藤玲奈がそこにいた。腰に手を当てて立ち、こちらを柔らかい表情で見つめている。相変わらずニットを押し上げる胸が目立つ。俺はベッドに正座しているので、目の前に玲奈ちゃんの胸があるような形になってしまった。って、距離近くないか!?
「やっと起きましたか。玲奈、でいいですよ。……先輩、って呼んでもいいですか?」
「あ、ああ……って、そうじゃない!玲奈ちゃん、どうしてここに……?」
 俺はようやく玲奈ちゃんの胸に釘付けになっていた視線をはずし、疑問を口にした。
「どうしてここに、じゃありませんよ……えーっと……」
「……?」
 少し考えた風な玲奈ちゃんが、今思いついたと言うように言った。
「そう!お……聖也先輩が、一人で寂しくクリスマスイブにゲームしている太一先輩を慰めてあげてって言うから来たんですよ?」
「聖也がそんなこと言ってたのか……聖也、玲奈ちゃん、ありがとう……」
 俺は聖也に心から感謝した。玲奈ちゃんをどうやって言いくるめたか知らないが、二人で過ごすためにアイツは帰ってくれたんだな。しかし、はて……?

「うーん……?」
「ど、どうかしましたか……?」
 玲奈ちゃんが怪訝そうに言う。
「いや、玲奈ちゃんってそういう服も着るんだね……?いつも、もっとふわふわした女の子っぽい服着てるけど……」
 今の玲奈ちゃんの服は、上は暖色系のニットに、下はシンプルなグレーのタイトスカート。確かに玲奈ちゃんっぽい組み合わせだが、もう少し高級そうな服を着ていたイメージがあるのだが……今はどちらかというとシンプルさが売りの、しま○らや○ニクロで売っていそうな感じの服だ。玲奈ちゃんのスタイルだから、まあ悪く見えるわけではないのだが。
「あ、はは……そこに気づきますか……なんで彼女いない歴=年齢なのにそんな細かいところに気づくんだコイツは……」
「ん?何か言った?」
「あ!いえいえ、なんでもありません!女物の服がなくてついさっきそこで買ってきたもので」
「え、女物の服がないって……?」
「まあまあ!細かいことは気にせず~。それより、一緒にゲームでいいんでしたよね?」
 玲奈ちゃんはにっこりと笑うと言った。
「へっ??」
「ほら、さっき一緒にゲームしたい、って言ってたじゃないですか」
「さっき……?言ったっけ?」
「言いましたよ~。いつも通りこれでいいですか?」
 そういうと玲奈ちゃんは、俺が最近聖也とやっているゲームを手にとって言った。
「あ、ああ……じゃあやろうか。玲奈ちゃん、ゲームできるの?意外……」
「あ、あー……多分いつもはしないんですけど、今日は出来そうな気がするんですよね」
「多分……?」
 俺はここに来て思い当たった。なるほど。わかったぞ。玲奈ちゃん、かなり天然……というか、変わった子なんだな。なんとなく、自分だけが玲奈ちゃんの意外な側面を知っているような気になり、俺はまんざらでもない気分になった。

***

「あっ……ちょっと、そこっ!だめっ!待って待って、あっ、死んじゃうぅっ!」
「だめだよ、待たない……ほら!」
「あぁぁ、それだけはやめて……」
「はい、また俺の勝ちだね」
 玲奈ちゃんは悔しそうな顔をしてコントローラーを投げ出す。ゲームは時々は玲奈ちゃんが勝つが、流石に長年やりこんできただけあって、聖也ならともかく、玲奈ちゃんでは俺の相手にはならないようだった。
「むぅ……いつもだったら互角なのにな……この手、コントローラー持つには小さくて勝手がわからないんだよなぁ」
「え?」
「あー、こ、こっちの話です!ほら、コントローラーおっきいなと思って……」
「でも玲奈ちゃん、初めてにしてはすごい上手かったよ。どっかでこのゲームやったことあったの?」
「え!?あ、友達の家でやったことあります!これはウソじゃないです!」
 そうなんだ。どおりで。と、いうか……

「玲奈ちゃん……」
「はい、なんですか?」
「い、いや、何でもない……」
 また玲奈ちゃんの不思議なところを見つけてしまった。最初こそ正座してゲームをやっていた玲奈ちゃんだったが、ゲームに熱中するごとに玲奈ちゃんはあぐらをかき始めていたのだった。横から見ている分には分からないが、正面から見たら、その……下着が見えてるんじゃないだろうか。それにしてもタイトスカートであぐらはかきづらそうなのだが、クセなんだろうか?

「あっ、そうか……」
 玲奈ちゃんが何かに気づいたように呟き、こちらに向き直って正座した。お、ようやく自分があぐらをかいている事に気づいたか?
「太一先輩……」
 玲奈ちゃんが少し身を乗り出すようにして、大きな目で俺の顔をじっと見てきた。可愛い子にそんなに見つめられたことがない俺は、思わず気恥ずかしさから視線を逸らしてしまった。
「な、何?」
「太一先輩、私のその……オッパイ、揉んでみたいんですよね?」
「ぶっ!?」
 俺は思わず鼻水を噴き出した。何を言うかと思えば。
「そ、それ誰から聞いたの……?もしかしなくても聖也が言ってたの?」
「あー、ま、まあそうですね……で、でも私、その……」
「え……何……?」
 玲奈ちゃんが視線を逸らしながら言いにくそうに続ける。
「オッパイまでは私、覚悟してきましたから……揉まれること……」
「……!?」
 何を言っているんだこの子は。初対面だよ。何かがおかしいぞ。……わかったぞ。
「玲奈ちゃん……」
 俺は玲奈ちゃんの顔をぐっと見据えて言った。
「は、はい……」
「……聖也に何か、脅されてるのか?俺で良ければ相談に乗るよ?」
 一瞬呆気にとられた顔をした玲奈ちゃんが、急に立ち上がって叫んだ。
「馬鹿野郎!俺がそんな卑劣な手を使うと思うか!!」
「えっ……玲奈ちゃん?」
「あっ……コホン……」
 戸惑う俺を見て玲奈ちゃんは座り直すと、
「……えー、聖也先輩ならそう言って怒ると思いますよ、と言いたかったんです。そんなこと、されてませんよ♡」
 そう言うと取って付けたように小首を傾げてにっこりと笑った。あざとい、と思いつつも全てが癒やされてしまうようだ。
「そ、そうなのか……じゃあ……」
「はい……太一先輩だから触らせるんですよ?特別ですよ?」
「は、はい……」
 思わず敬語になる俺。

「ほら……」
 玲奈ちゃんが、恥ずかしそうに目線を下に向けながらニットの胸を強調するように脇を締め、ぐっと突き出す。元々大きい玲奈ちゃんの胸が俺の目の前に突き出され、さらに大きく見える。ごくり、と生唾を飲み込みながら震える手を近づける俺。
 ふゆん、と俺の中指が最初に玲奈ちゃんの胸に触れた。瞬間、ぴくっ、と玲奈ちゃんの身体が震える。
「ひっ……」
「ご、ごめん!大丈夫!?」
 条件反射的に謝ってしまう俺。
「すまん……人に胸を触られるなんて初めてだったのでな……」
「……初めてなんだ?」
 こんなに簡単に胸を揉ませるのに、意外なことを言う玲奈ちゃん。時々男言葉のようなものが出るのは、玲奈ちゃんのクセなんだろうか?しかし、俺は緊張と興奮でそれどころではなかった。今もまだ震える指先には、先ほどの玲奈ちゃんの柔らかい胸の感触が残っている。ん、柔らかい……?
「玲奈ちゃん、あの、もしかして……」
「ん、何……なんですか?」
「い、今ノーブラなの?」
「あぁ……そんなことですか……そうです、ノーブラですよ。このニットの下には何も付けてません」
「えぇ……」
 あまりにも堂々とした答えに、更なる返答に窮してしまう。
「女物の服を着るまではなんとかなったんですが、流石に女物の下着を着るのは恥ずかしくて……これもこっちの話ですが」
「女物の下着を着るのは恥ずかしいことなんだ……?」
 じゃあ、普段からノーブラなのか?とことん変わった子だな、と思いつつ俺はあることに気づく。
「え、じゃあ、その、下も……?」
「あー……そうですね。下も穿いてないです。女の子がトランクス穿くのもなんだか、と思いまして」
「そ、そりゃ女の子がトランクスは穿かないだろうけど」
「まあ、そんなことはいいから!ほら、もっと揉まなくていいんですか?彼女ができてゲームして、オッパイ揉むのが太一……先輩の夢だったんでしょう?好きなだけ揉むといいですよ」
 そう言うと、玲奈ちゃんは俺の手を取って自分の胸にグイグイ押し付けてくる。俺の手のひらに柔らかい感触が伝わってくる。俺の中で、何かが弾けるような感触がした。

「わわっ!」
 玲奈ちゃんが声をあげる。俺が玲奈ちゃんを床に押し倒したからだ。
「太一!……先輩、何するんですか!?」
「ここまで来たら決まってるだろ……?」
 言いながら俺は玲奈ちゃんのニットを下からまくりあげる。想像していたとおりの大きい、そして綺麗で張りのある玲奈ちゃんの乳房が視界に入ってくる。乳首は綺麗なピンク色で、ツンと立っている。
「「うぉっ」」
 俺と玲奈ちゃんが同時に声をあげる。ん、なんで玲奈ちゃんまで自分の胸を見て声をあげるんだ。
「次は下だ……」
 俺は玲奈ちゃんのタイトスカートのジッパーを下ろそうとする。
「な、何をするんだ!やめろ!!」
 思いがけず抵抗する玲奈ちゃん。
「男の部屋にノーブラノーパンで来て、自分からおっぱい触らせてそれで終わりになるわけないだろ……!」
「揉むだけでいいって言ってただろ!」
 言い争っているうちに、玲奈ちゃんのスカートが下ろされる。言ったとおり下着は穿いていない。すなわち――玲奈ちゃんの下半身が露わになる。すらりとした脚、程よく肉の付いた太もも。肌の質感は思わず触れたくなるような、柔らかく健康的な色の肌だ。そして、その両足の付け根には――
「おお……」
 俺はごくりとつばを飲む。玲奈ちゃんもなぜか自分の下半身をまじまじと見つめていたが、はっと我に返ると俺に言う。
「太一……先輩!胸は揉んでもいいです!けど、男とセックスだけは勘弁してください!お……私にそういう趣味はないんです!」
「え、玲奈ちゃん、レズなの……?」
「う……えぇい、この際そういうことで!そう、私はレズなんですぅ!女の子が好きなんです!」
 そうか……意外だ。それで時折、男言葉が出るんだろうか?
「……でも、そう言われてもここまで来てしまった以上俺も引き下がれないし……」
「本当に勘弁してください!なんでもしますから!」
 そう言われて俺の目がきらりと光る。
「何でも……?今、『何でもする』って言ったよね?」
「え……?は、はい……」
「じゃあ、まずそのニット……全部脱いでもらっていいかな?」
「何をする気ですか……」
「いいからいいから。なんでもするんでしょ?」
「……わかりました。でも……セックスだけは勘弁して下さいね?」
「わかってる……」
 観念したようにニットを脱ぎ、生まれたままの姿になる玲奈ちゃん。言ったとおり、本当に下には何も付けていなかったようだ。

「おお……」
 想像した以上に均整の取れたプロポーションと、大理石のようにシミひとつない肌に、思わず俺はため息を漏らす。俺の股間は既に最高潮まで充血しきっていた。
「……脱ぎましたよ。これで許してもらえますか?」
 胸を手で隠して恥ずかしそうにしながらも、チラチラと自分の身体を盗み見るように見ている玲奈ちゃん。自分の身体など見慣れているはずなのに、そんなに気になるのだろうか。
「うん。……じゃあ、ここでオナニーしてもらえるかな?」
「へっ!???」
「セックスは諦めるよ。でもさ、オナニーしてくれれば……俺、玲奈ちゃんのその姿を見ながらイけると思うんだ……」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!!それは恥ずかしすぎる!!」
 玲奈ちゃんは両手をバタバタと振りながら答えた。
「……さっき、何でもするって言ったじゃん……」
「それは言ったけど!そんなのもう実質セックスと同じようなもんだろ!」
「全然違うし!じゃあむしろセックスしてくれよ!……それに」
「……それに?」
「玲奈ちゃん、さっきから自分の身体チラチラ見てるだろ?それで俺、気づいちゃったんだ」
「……!!バレちゃったのか……」
「ああ」
 玲奈ちゃんは観念したようにしゅんとなった。案の定だ。俺は勝ち誇ったように続ける。
「玲奈ちゃん、自分の身体で興奮しちゃうナルシストなんだろ?」
「……?」
「とぼけなくってもいいんだよ?別に恥ずかしいことじゃない。そのプロポーションなら、自分で興奮しちゃうのもわかるよ」
「……鈍感だと思っていたが、ここまでとは……」
「え?」
「あ、こっちの話です……それで、どうしたらいいんですか……?」
「簡単な話さ。そこに姿見があるだろう?あそこで自分の身体を見ながらオナニーするんだ」
 ごくり、と玲奈ちゃんが喉を鳴らす音がする。玲奈ちゃんが答える。
「しょ、しょうがないなあ……じゃあ、この身体でオナニーしちゃおうかな……」
 そう言うとのろのろと姿見の方へ向かう。

「おぉっ……これは……」
 鏡に映った自分自身を見て、玲奈ちゃんは男のような表情で自分を舐め回すようにしばし見つめていた。やっぱりナルシストじゃないか。
「さあ、玲奈ちゃん。早くいつも自分でしているみたいにオナニーしてごらん?」
「いつも……自分で……」
「そう、自分で」
「とはいえ……女の子の身体でオナニーするの、初めてだからなぁ……」
「えっ」
「い、いや何でもないです!冗談ですっ!」
 玲奈ちゃんはそういうと、「体育座り」のような姿勢をとり、そこから足を徐々に開いていった。
「おお……こうなっていたのか……なんか変な感じだ……んっ!」
 筋に沿うようにして物珍しそうに自分の性器に指を這わせていた玲奈ちゃんだったが、快感を感じたのか、目を一瞬きゅっと閉じて身体全体をビクン、と震わせる。徐々に顔が紅潮していくのが俺からも見て取れた。
「それじゃ、俺も……」
 カチャカチャとズボンを脱ぐと、早速俺は玲奈ちゃんを見ながら自分のモノを扱き出した。
「太一……先輩、見られてるのすごく恥ずかしいです……」
「玲奈ちゃん、感じてる姿可愛いから大丈夫だよ」
「ば、馬鹿野郎……」
「ほら、オナニーに集中して?」
「うう……」
 言われて玲奈ちゃんは自慰行為に戻る。徐々に濡れてきたようで、自分の愛液をぬらぬらと伸ばすようにして性器をさすっている。
「こっちはどうかな……男でいうとチンコにあたるんだよな?……ひぃぁんっ!!!」
 チンコ、などという言葉を玲奈ちゃんが発したことに俺は興奮してしまうが、当の玲奈ちゃん本人はクリトリスを恐る恐る触って、これまでにない快感を得たようだ。いちいち反応が初々しいのだが、本当にオナニーしたことないのだろうか?そのまま、愛液で濡れそぼった指で玲奈ちゃんはウットリした目つきでクリトリスへの刺激を続けている。本当に扇情的な光景だ。

「あぁ、ひぅっ、い、きもち、いい、よぉ……これ、つまむと……ひゃぁぁん!ぁぁん!ゃぁん!」
 隣まで聞こえるのではないかと思うぐらいの甲高い声で喘ぎながらクリトリスを親指と人差し指で器用につまみ、夢中で指を動かす玲奈ちゃん。その光景に俺の興奮は最高潮まで達していた。……そうだ。俺は顔を紅潮させ、夢中になってオナニーを続ける玲奈ちゃんの後ろにあぐらをかいて座り、右手で自分のものを扱きながら左手で玲奈ちゃんのおっぱいを揉みしだいた。
「あふっ、な、なにするんだよぉっ」
「玲奈ちゃん、おっぱいは揉んでいい約束だったろ?」
「こ、このじょうきょうで、もむなんて、きいてな、あっぁあん!ゃぁぁん!」
 抗議する玲奈ちゃんの乳首を少し摘むと、玲奈ちゃんは身を捩らせて快感にもだえた。それでもクリトリスを弄る指は一向に止まらない。
「どう、玲奈ちゃん、気持ちいい?」
「きもちいい、おんなのからだ、きもちいいよぉっっ、おかしくなりゅぅっ!」
「玲奈ちゃん、俺イキそうだよ……一緒にイこう?」
「いやだぁ、それは嫌ぁっ、でもおれもいきそうっ……ひぅっ……あぁぁんっ」
「ほら、鏡見てごらん」
「え、鏡……?」
 玲奈ちゃんがクリトリスを弄りながら鏡をもう一度見る。そこには、目に涙をいっぱいに溜め、全身をピンク色に染めながらオナニーにふけり、後ろから男に胸を揉まれる女子大生――佐藤玲奈の痴態が映し出されていた。

「あっ、あっ、これ、おれなの、れなちゃん、れなちゃん、イく、イッちゃうぅぅぅっっっ!」
まるで放たれる前の弓のように玲奈ちゃんの身体がえび反りになると、ビクッ、ビクッと自分の名前を呼びながら玲奈ちゃんは絶頂を迎えた。それを見た俺も、ほぼ同時に精液を――玲奈ちゃんの背中に向けてぶちまけたのだった。

***

「太一、本当に最悪だよ……もう二度と来ないからな」
 シャワーを浴び、服を着ると玲奈ちゃんは頬を膨らませながらそう言った。絶頂を迎えた後、しばらく起き上がることもできずに余韻に浸っていた玲奈ちゃんだったが、背中に精液をかけられていたことを知ると激怒しながらシャワーに入ったのだった。
「ごめんって……でも、気持ちよさそうだったじゃん……玲奈ちゃんも」
 それに、俺のこと「先輩」じゃなく「太一」って、名前呼びになってるしな。これは脈アリなんじゃないかな?
「それでも最初はゲームして胸を触るって約束だっただろ!帰る!」
「ま、待って!また会えるかな?」
「あー……それについて言っとくと、もし『私』に学校で話しかけて、今日のこと喋っても私はとぼけますからね、そしてもう一生先輩と関わることはないですから!」
「つまり、これは二人だけの秘密……?」
「ふ、二人だけどころか、『私本人』も今日のことは忘れますから!絶対にしゃべらないでくださいね!」
「わ、わかったよ……」
「それじゃ!」
 玄関口へ向かう玲奈ちゃん。それを追って見送る俺。閉まるドア。

「ぎゃっ!」
 悲鳴のような声が聞こえて、思わずドアを開けると、玲奈ちゃんが玄関先で盛大に転んでいた。どうやら、ハイヒールでバランスを崩して転んだらしい。
「玲奈ちゃん、大丈夫……」
「だ、大丈夫ですから!お気になさらず!」
 ヨチヨチとした足取りで生まれたての仔鹿のように歩く姿はとても大丈夫とは思えなかった。高いヒールを履くのに、慣れていないのだろうか……。女の子なのに?そう思いながら俺はドアを閉めると、玲奈ちゃんの痴態を思い出し、何回か抜くうちにいつしか眠ってしまった。

***

「……と、いうことがあったんだよ。聖也、なんで顔を覆ってるんだ?」
 年末。年越し。俺はいつもの歌番組を見ながら、聖也にあの日あったことを語っていた。
「……いや、何でもない。良かったじゃないか……」
 なぜか聖也はあの夜あった話をしても終始仏頂面、玲奈ちゃんのオナニーシーンの話をしても顔を赤らめるばかりだ。
「聖也、もしかして俺に嫉妬してるのか……?」
「するか!馬鹿!」
「まあいいや。それで、学校で玲奈ちゃんに会った時、不思議な事に気づいたんだよ」
「ふ、不思議なこと?玲奈ちゃんに何か話したのか?」
「いや、普通にあの時より高いヒール履いててさ。別に転んでなかったから、『ハイヒール履くの慣れたんだね?』って声かけたんだ」
「……玲奈ちゃんは何か言ってたか?」
「不思議そうな顔して、首を傾げちゃってさ。あの時言ってたとおり、あの日のことは忘れたことにしたいんだろうなぁ」
「……そりゃそうだろうな」
「でも、また来年のクリスマスも来てくれそうだぞ?」
「えっ」
「俺がさ、『お世話になりました。来年もよろしく!』って言ったらさ、ニッコリして、『こちらこそ。来年もよろしくお願いしますね』って言ってくれたんだよ!」
「……いや、多分それは違う意味だと思うぞ……」
「そんなこと聖也には分かんないだろ!あの時の玲奈ちゃんはエロくてさあ……」
「だからその話はやめろ!!」

また今年も、暮れていく。

***

12/16の「書け」麻雀(3位・4位になったら罰ゲームでTSFな創作をする)に負けたので書きました。
「脱ぐ」作品をということで指定されましたので、親友が彼女ができない主人公のためにひと肌「脱ぐ」……という話をば。
ありがとうございました!

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みなづきななな

Author:みなづきななな
皆月なななです。 TSF(男が女になっちゃう)小説を書いています! Twitterもよろしくね https://twitter.com/nanana_minaduki

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