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初の漫画作品『幽体の魔法陣 ~あの娘に憑依して彼女とXXX~』が出ました!

こんにちは、皆月なななです。

なんと!

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わたし原作の『幽体の魔法陣』が漫画作品になりました!

本日発売!
漫画を孝至さんに担当していただいております。
こちらのブログで載せていた『幽体の魔法陣』とは違うストーリー展開になっており、簡単に言うと憑依百合ものとなっております!

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前半は女の子の身体に入ってしまってあわあわしながらも……な主人公。

そして後半は……
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あ、あれ……これはなんだか……!

ということで女の子の身体になっちゃって自分で気持ちよくなったり気持ちよくさせられちゃったりしそうなお話です!
孝至さん……わたしが指定しといてなんだけどこのTS百合はえっちすぎるよ孝至さん……!やった!
さらなるサンプルはリンクで飛んでみて確認してみてくださいね!

『幽体の魔法陣 ~あの娘に憑依して彼女とXXX~』

わたし6/12が誕生日なのでよければ誕生日祝いのつもりでぜひ読んでみてくださいね!

2018/8/23追記:
DLsite.comでも販売中!アドレスはこちら!
幽体の魔法陣 ~あの娘に憑依して彼女とXXX~

妹の彼氏に憑依するつもりだったブラコンの兄が 間違って妹に憑依するお話

とうとう、この日が来てしまった。
「お兄ちゃん、紹介するね?航平くんです」
「はじめまして。悠香の彼氏の航平です」
大学1年生になった妹の悠香が俺の前に初めて連れてきた彼氏。航平、という男は悠香をちらりと見たあと、俺に軽く挨拶した。
いかにもそいつはモテそうな雰囲気を醸し出したイケメンで、表情一つ変えないクールな表情とそっけない挨拶もなんとなく似合ってしまうのが腹立たしい。
それにしても、可愛い俺の妹を呼び捨てか。いい度胸してるなお前。
「よろしく、航平くん。兄の直人です」
俺は内心はらわたが煮えくり返るような感情を感じながら、表面上は冷静に笑顔を作った。
悠香も少し困ったような笑顔で小さく笑うと、その男の方をちらりと見ながら、恥ずかしそうに言った。
「じゃ、じゃあ航平……航平くん。私の部屋にあがろうか……」
「おう」
普段はお互い名前を呼び捨てにしていることが窺える悠香の態度に、またもどかしいものを感じた。

俺と悠香は結構年の離れた兄妹で、俺も悠香も小さい頃に両親は他界してしまった。
その後は祖父母に育てられた俺と悠香だったが、俺はその頃から悠香のことを守ってきた。
俺が兄という立場から特別な目で見てしまう、というのを差し引いても、悠香は可愛い。
くりくりとした大きな目。艷やかな黒髪。綺麗な肌。外見だけではない。真面目で素直で優しい性格。
それに加えて、最近は兄の俺からみてもその……身体つきが女らしくなってきたと思っていた。
客観的に見て、悠香はかなりモテると思う。
だからこそ、俺がこれまで「悪い虫」がつかないように守ってきたというのに……。
中高は女子校だった悠香が共学の大学に行ってからしばらくは彼氏ができず、安心していたのもつかの間。
気がつけばこの航平という男が現れ、俺の悠香をかっさらっていったのだ。
しかも、悠香から告白したという。
……そんな事があり得るわけがない。
明らかに、悠香はこの航平とかいうイケメンに騙されているのだ。
悠香を盗られてたまるか!
階段を上がっていく二人の後ろ姿を睨みつけながら、俺は決意を新たにした。

「そういう時のために用意したのが、これなんだよな……」
自分の部屋に戻った俺は厳重に部屋に鍵をかけ、つぶやいた。
怪しげな通販サイトで見つけた「憑依薬」。1時間だけ他人に憑依することができるというものだ。
最初は半信半疑だったが、ダメ元ということもある。俺も噂だけは知っていたので、もしかすると本当かもしれない。
結構な値段がしたが、そこは社会人パワー。悠香のためを思えば金など取るに足らないことだ。
俺の計画はこうだ。この憑依薬を使い、悠香と一緒にいる航平に憑依する。
そして、航平の身体を使って悠香に嫌われるようなことをしまくってやるのだ。
例えば……二股、いや三股していると悠香に向かって言うとか……悠香を傷つけるかもしれないが、こっぴどく悠香を振るとか…… 航平の身体で、わざとおもらしして泣くとかもいいかもしれない……。
俺はほくそ笑みながら、ドリンク剤のような外見をした憑依薬を一気に飲み干した。ドロっとした甘いヨーグルトのような味が口の中に広がった。

気がつくと、俺は空中から俺の事を見下ろしていた。おそらく、今俺は俺の身体から抜け出し、魂だけになっているのだろう。手を見てみようとしたが、自分の身体が見えることはない。そこに確かに自分の身体があるような「感覚」だけがそこにあった。
(やっぱり、本物だったのか……)と俺は呟いたが、その声が俺の耳に入ることはなかった。
自分では声を発しているつもりなのだが、霊体?幽体?ではその声が空気を震わせることはない、ということなのだろう。
おっと、そんなことを考えている暇はない。早く悠香の部屋に行かなければ。あいつに悠香を奪われる前に!
確か泳ぐような感じで空気中を進んでいくんだったよな。
俺は憑依薬についていた説明書に書いてあったとおり、平泳ぎのようにしながら二回まで上っていった。
あとは、あいつの――航平の身体に幽体ごと入り込めば憑依ができるはずだ。

悠香の部屋に入ると、悠香とあいつは悠香のベッドに並んで腰掛けていた。
悠香は真っ赤になってうつむいていて、一言も発しない。
航平はといえば、そんな悠香のことをちらりとも見ず、遠くの方を眺めるような目つきをしている。
(この調子だと、まだ何もしてないな)
俺は少しホッとした。
しばらく黙りこくったあと、悠香がやっとのことで口を開いた。
「ご、ごめんね航平!そういえば飲み物とか飲むよね?」
「そういえば、少し喉乾いたかも」
「お茶、私の冷蔵庫にあるから……」
そう言いながら、悠香は立ち上がって部屋用の小さな冷蔵庫を開ける。
「あっ……」
小さく悠香が声をあげる。
「ごめん航平……ペットボトル、1本しか無くて……飲んでいいからこれ!私は大丈夫……」
そういうとペットボトルに入ったお茶を差し出す悠香。
本当にいい子だな悠香は……という気持ちと、そんな奴に優しくするな!という気持ちが複雑に絡み合う俺。
そんな俺の気持ちも知らずに、
「ああ」
というと、あいつはお茶のペットボトルを開けると、少し飲んだ後、悠香にペットボトルを渡した。
「あとは飲んでいい」
「え!?」(え!?)
悠香と俺は同時に声をあげた。まあ、悠香には俺の声は聞こえていないのだが。
(それじゃ、間接キスになっちゃうじゃんか!悠香、よせ!)
俺は悠香に聞こえないのも、幽体になっているのも忘れてまじまじとペットボトルを見つめる悠香のほうに突進したのだが……
俺は勢い余って、魂ごと悠香にぶつかってしまったのだった。

「悠香、おい悠香……起きろよ、どうした?」
俺が目を覚ますと、あいつが俺を心配そうに軽く揺さぶっているところだった。
そうだ、そういえば悠香は!?
そう思い俺がガバッと身を起こすと、髪の毛がふわっ、と俺の耳元を柔らかくくすぐった。
「あれ?ひゃぁっ!?」

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髪の毛が長い。その違和感に思わず声を出したが、その声もまた女みたいな高い声が出て、俺は驚いてまた変な声を出した。
「悠香、大丈夫か?」
そう言うあいつの方を見ると、目線が俺より高い。確か俺のほうが少し身長が高かったはずなのだが……って、俺が縮んでる?
「まさか……」
俺はまた女のような声を出しながら顔面蒼白になった。
手を見る。
霊体ではない。
かといって俺の手でもない。
白くて細い……柔らかい肉付きの手のひらをした……女の子の手だ。爪には薄いマニキュアが塗られていた。
自分の身体を見る。白くてふわふわとしたニットを押し上げる胸に隠れて、下半身が見づらい……
が、さっき妹が履いていたはずのロングスカートを俺が履いているのがわかった。

もしかしなくても、これは。

俺、悠香になっちゃったのか……?
声に出さずに察すると、俺は恐る恐るあいつの方を見た。
あいつは見るからに怪訝そうな顔をしているが、まさか悠香の実の兄が中に入っているなんて絶対気づくはずがない。
こいつの身体に乗り移って悠香に嫌われるつもりだったが、こうなってはしょうがない。

そう冷静になった俺は、計画を変更することにした。
悠香の身体を使って……悠香に成りすまして、こいつが二度と悠香の前に現れないぐらい、こっぴどく振ってやるしかない。
「なっ、なんでもないよ、航平くん♪」
俺は精一杯女に見えるようにしなを作りながら言った。
「航平くんって……悠香、本当に大丈夫か?」
しまった。悠香はこいつのこと、呼び捨てしてるんだった。
「こ、航平!航平航平!うん、全然大丈夫!な、なんか喉乾いちゃったな……」
そうあいつの名前を連呼して言い直すと、誤魔化しついでにちょうど手元にあったペットボトルのお茶の蓋を開けると、口をつけ一気にお茶を流し込み、そしてこれがさっき俺が悠香に憑依してまで全力で航平との間接キスを止めたお茶であったことを思い出した。
「ぶふぁっ!?」
一気にお茶を噴き出す俺。その拍子にペットボトルに入っていたお茶も取り落とす。
「あっ」
一瞬の静寂のあと、残ったのはニットとスカートをお茶ですっかりグショグショに濡らして呆然とする俺と、同じく呆然と俺を見つめる航平だった。
「ふふっ……」
しばらく目を見合わせた後、航平が堪らないと言うようにクールな顔を歪ませて笑う。
「な、何がおかしいんだよ!!」
馬鹿にされたような気がして、思わず俺は言う。
「すまん。いや、悠香って結構天然なんだなって思ってさ。真面目なだけかと思ってたけど、イメージちょっと変わったかも」
「い、いや!普段の悠香はこうじゃないから!」
俺はとっさに反論してからしまったと思う。
「わ、私は普段はこんな感じじゃない……のよ?」
「はは、普段とは違う感じで可愛いじゃん」
「え」
いかん。
これ、ちょっといい感じになっちゃってないか?
それはまずい。計画通りにやらなくては。
「こ、航平なんか嫌いだから!嫌い嫌い嫌い!!」
俺はムキになって嫌いと連呼する。これは本心だ。
航平は笑いながら言った。
「照れてんのか?そういうところも可愛い」
「なっ……」
何なのこいつ。俺の悠香に向かって……可愛いのは事実だけど……。
「そう言う航平だって、クールかと思ってたらそうやってからかって……イケメンだからって全てが許されると思うなよ!」
怒りで航平のほうを睨みつける。
「……ふーん、俺のことそういう風に見てたんだ」
航平も俺の方をじっと見てくる。
何だ?こいつ俺とやる気か?そう思った俺は、航平から目をそらすことなくじっと見返してやった。
航平の顔がだんだん近づいてくる。近づいて???
気づいたときには俺は悠香の身体で航平にキスされていた。
「――――ッ!?」
声にならない声を出して抵抗する俺だったが、ことのほかがっしりと頭を後ろで掴まれていて、悠香の身体ではほとんど抵抗になっていない。
悠香の口に舌が入ってきたところで俺はやっとのことで航平の身体を両手で押しのける。
「ば、馬鹿!?何してんの!?」
俺は口を拭きながら言う。
って、さっき間接キスも恥ずかしがってたし、これ、悠香のファーストキスだったんじゃ……。

「……だって、そういう雰囲気だったじゃん、今」
「違う!俺は睨んでたの!本当に嫌いなの!くちゅん」
俺は我を忘れて否定しながらくしゃみをしてしまう。
うう、さっきお茶で全身びしょ濡れになって、ちょっと冷えたような……悠香の身体に風邪を引かせたら大変だし、ここは……
「大丈夫か?風邪引くから一回着替えたらいいんじゃないか?」
「う、うるさいなあ!わかってる!」
先に言われてしまった。
「俺、部屋出て待ってるからさ。着替えたら声かけてよ」
「当たり前だ!出てけ!覗くなよ!」
「ははは、はいはい。本当、今日の悠香は面白いな」

「うう」
俺は下着姿で姿見の前に立ち、うめく。
まさか俺が、妹として着替えをすることになるとは……悠香、すまん。
「ブラジャーまで濡れてるよ……これ、どうやって取るんだ?手が……」
と呟きながら、手を後ろに、鏡を見ながらブラのホックに手をかける俺。
俺の身体と違い、予想外に身体が柔らかく、結構簡単に手が届いてしまう。
「んっ……これを外すのか」
妹の声で呟きながら、俺は妙な背徳感に悩まされながら自分の、悠香のブラを外す。
「おお……」
鏡に映るのは、まじまじと自分の身体を見つめる俺の妹、悠香。
白く、うっすらと自分の膨らんだ胸に血管が走っているのがわかる。
「俺の胸……悠香の、胸」
俺は呟きながら、そっと横から触ってみる。
柔らかく、みずみずしい感覚が手から伝わってくる。同時に小さな手で触られている感覚も伝わってくる。
どちらも男のときには味わうことのなかった感覚だ。
俺は自分の――悠香の身体の鼓動が高まるのを感じていた。
航平が待っているであろう、ドアの向こう側をちらりと見る。
「ちょ、ちょっとだけなら……」
俺はゆっくりと、今は自分のものになった悠香の乳房に触れていく。
「なんか、変な感じ……」
男のときにはなかったものをゆっくりと揉みつつ、俺はぷっくりと膨れてきた乳首にも指をかける。
「ふぅっ……!」
押し殺した悠香の声が俺の喉から発せられる。
やば、これ、気持ちいい。
両の人差し指と親指の腹で左右の乳首を軽く摘んだり弄ったりしながら、俺は興奮が次第に高まり、身体が内側から熱くなるのを感じていた。
(こ、こんなこと……妹の、悠香の身体でしてちゃダメなのにっ……)
ダメなのに、止められない。
俺は上気する悠香の顔を鏡で見ながら、自分の勃起しているであろうアレをシゴくため、 乳首をいじっていた右手をショーツの中へと潜らせた。
「……?」
俺が思った位置には自分のイチモツはなく、うっすらと茂みが広がるばかりだった。そこではた、と気づく。
(あ、そうか、俺、今女だったんだ……うわっ!?)
股間をまさぐっていた指が、何かぬるっとしたものに触れる。
一瞬、気づかないうちに射精したのか?と思うが、今度はすぐに「自分はいま女だ」ということを思い出す。
(悠香のマ○コ、濡れてる……。俺が興奮して濡らしてるんだ……)
ヌルヌルした分泌液を、擦り付けるように股間全体に引き伸ばしていく。
「自分が悠香になって、悠香の身体を弄って気持ちよくなっている」という背徳感が、快感を加速させていくのがわかった。
(あ、気持ちいい……かも……)
「ひうっ!?」
スリスリと股間をまさぐっていたが、俺は突然の快感に小さく息を飲む。
(これ、クリト○スだよな……気持ちいい……)
俺は今指が当たった悠香のクリ○リスを、悠香の指を使って弄りながら、倒錯的な興奮を高めていった。
弄るスピードは小刻みに、一定のリズムで快感物質を俺の脳に送り届けていく。
左手で弄っている乳首も、勃起して硬くなっているのがわかる。
(あ、ヤバ、な、なにかくるっ……!)
「ひぅっ!」
男のイくときのような、だがもっと強い快感が絶頂に達し、俺の全身を駆け巡る。俺は初めての女のイく感覚に、頭が真っ白になるのを感じた。

ショーツの中に右手を入れたままベッドに寝そべり、しばらく、ぼんやりしていた。
「はぁ……はあ……はぁ………」
俺、悠香の身体でイッちゃったんだ……。
男のオナニーとは違う意味での罪悪感を感じながら、俺はふと横を向いた。そして――固まった。
ベッドの横にはいつのまにか航平が立っていた。
「……い、いつからそこに?」
「……悠香が下着の中に手を入れだしたところぐらいから、かな」
それは、自分のオナニーのほぼ一部始終を航平に見られていたことを意味していた。
「覗くなって言ったじゃん!」
「そう言われても、遅かったしさ」
「で、でもっ……わ、忘れろ!今見たこと全部忘れろ!きゃぁっ!?」
急に航平が覆いかぶさってきて、悠香の身体になっている俺は為す術なく押し倒されてしまう。
「忘れろとか言われても困るし……そんなに欲求不満なんだったら、俺とすればいいじゃん?」
「だっ、ダメだって!それは許さない!コレは悠香のっ……うぷっ!?」
航平に唇を塞がれ、さっきよりも濃厚に舌を絡みつかせ、舐め回される。
(や、やめろっ!悠香を汚すな!俺は兄として、悠香をっ……!)
抵抗しなきゃいけないはずなのに、なぜか力がはいらない。むしろ。
(お、俺っ、こいつのキスで気持ちよくなっちゃってるぅ……)
目がトロン、として、惚けたようになっているのが自分でもわかる。
(もしかして、悠香の身体に俺の精神が引っ張られてきてる……!?)
そうしている間に、穿いていた下着を航平が脱がしにかかる。
「だ、だめだってぇ……」
「……なら、もうちょい抵抗したらいいんじゃないか?うわ、糸引いてる。超濡れてんじゃん」
俺はキスされてからぼうっとなってしまい、下着を脱がされるままになっていた。
自分でもさっきより濡れてきているのがわかるぐらいだが、改めて人から言われると恥ずかしい。
足を拡げられ、悠香の恥ずかしい部分がより露わになる。
「み、見るなぁっ!見ないで!」
「大丈夫だって。悠香、かわいいよ」
「知ってる!それは知ってるからぁ!見るなぁ!」
錯乱した俺は身悶えしながら連呼するが、航平に手首を掴まれ固定されてしまう。
いつの間にか航平も下着をおろし、下半身を露出させている。
「お、俺のより大きい……やめろぉ!本当にやめて!マジで!」
「……何か言ったか?もう準備万端みたいだし、挿れるぞ、悠香」
ずぶっ、と異物が俺の、悠香の膣に挿入されていき、膣壁を拡げていくのを感じた。
と共に、それに合わせて猛烈な痛みが俺を襲った。
「いた、痛い!!いたああああ!」
びっくりするように航平が俺の顔を見る。
「……悠香って、もしかして処女だったのか?」
「当たり前だぁ!よくもぉ……」
「……大丈夫。ゆっくり動くから」
そう言うと航平はゆっくりと前後しだした。
「悠香、どうだ?気持ちよくなってきた?」
「馬鹿っ、野郎っ、全然気持ちよくなんかっ……なっ……い……!」
そう言いながら俺は、さっきよりは痛みが和らいでいくのを感じていた。
痛みばかりだった部分が、徐々にヌルヌルとした結合の感覚に変わっていく。
「あっ……んっ……うぁぁっ……」
俺、今妹の身体で妹の彼氏に抱かれて感じちゃってるんだ。ごめん、悠香。
「気持ちよくなんかないっ……あっ……んっ……」
俺は特に聞かれていないのに強がりを言うことでなんとか自分を保ちながら、自然に漏れる悩ましげな声を抑えきれなかった。
「さっきみたいに、クリト○ス弄ってやるよ」
そう言うと航平は俺の下半身に手を伸ばす。
「うぁっ!あっ!ああっ!」
俺はクリ○リスが触られるたびに、電流みたいに駆け上がってくる快感で思わず大きな声をあげていた。
いつしか俺は、自分でさっきのように自分の、悠香の乳房を揉みながら、快感を高めるのを止められなくなっていた。
「ま、またイッちゃう、航平っ、航平っ」
「悠香っ……俺もイくっ……」
さっきよりも強い感覚に、俺は目の前が真っ白く染まっていくのを感じた。
薄れ行く意識の中で、俺の腹に航平の精液と思しき、熱いものがかけられるのがわかった。

「それじゃ、お邪魔しました」
玄関先で、航平と悠香がやり取りする声が聞こえる。
「……うん。航平、また……」
「なんだ?さっきと違って大人しいじゃん」
「そ、それは……さっき、私どうかしてて……なんか、自分でするなんて、普段はそんなにしてなくて……」
「でも、たしかにしてただろ?」
「そ、そうなんだけどっ……記憶にはあるんだけど、あの時の私、私じゃないみたいな考え方だったの……自分のこと、大好きっていうか……」
「ナルシストなんじゃないの、悠香」
「そういうのじゃないのっ!もう、わかんないかな……それに、お兄ちゃんも居たから、今日は航平とするはずじゃなかったのに……バレちゃったかな……もう、何で今日しちゃったんだろ……」
「まあ、悠香の別の一面が見れて、俺は悠香のこと好きになったよ。また来るよ、悠香」
「……」

無言になった。きっと二人で見つめ合って、キスか何かしてるのかもしれない。
悠香の身体の憑依が解けて、本来の身体に戻った俺は自分の部屋で悶々としながらそれを聞いていた。
結果的には俺が悠香に成りすましてあいつと悠香の仲を引き裂くどころか、むしろ取り持つことになってしまったみたいだ。
どうやら憑依中にしたことや考えたことは、自分自身の意志でしたことだというふうに捉えてしまうみたいだな。

悶々としながら、俺はまた、例の怪しげな通販サイトを開いていた。
かなりいい値段するが、その分の価値はある。憑依薬をカートに放り込み、注文を完了する。

今度憑依するのは、もちろん――

続・天使のような(前編)

この作品は『天使のような』の続編です。お読みでない方はまずは『天使のような』前編からお読みください。

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天草裕里香――裕里香さんは、僕らのクラスの人気者、という表現ではとても収まりきらないくらい、誰からも好かれる女の子だ。
ぱっちりとした大きい目、透き通るような白い肌、ふるふるとした唇。スタイルの整った身体、程よく大きい胸。
僕だけじゃない。みんながその美しさに見とれていた。
裕里香さんはクラスの、いや学年中の男子の憧れの的だった。
その容姿だけではない。裕里香さんは天真爛漫で、素直で、誰にでも優しく接する。
嫌味なところがなく、その容姿を鼻にかけるようなこともしない。だから、男性だけではなく女性からも好かれる。

裕里香さんの微笑みは、すべての人を幸せにする。
その微笑みは――そう、まるでそれは天使のような。

しかし、その裕里香さんの「別の顔」を知っているのは、世界広しといえども僕だけだ。
そう、あの日から、裕里香さんは変わってしまった。

+++

「あぅん、あぁん、はぁ……すごい、いいよぅ……」
裕里香さんが一糸まとわぬ姿で、仰向けになった僕に跨りながら息を荒くして喘ぐ。
裕里香さんの部屋のベッドで、僕たちはこの数ヶ月、セックスばかりしていた。
裕里香さんのトロトロになった膣が僕のアレを的確に、吸いつくように刺激する。
その刺激で僕のアレは限界寸前まで大きく、硬く勃起し、それが裕里香さんの膣内をまた刺激する。
そんな無限にも思えるループに、僕たちははまり込んでいたのだった。

「見て、大木くん……私達、繋がっちゃってるよ。エッチだね」
先程から、僕に結合部位を見せつけるように少しのけぞるような体勢になり、僕の足に手を置きながら、身体を前後に揺するように動く。
裕里香さんの真っ白で、しなやかな肢体が前後するたびに結合部位を通して、僕に電流のように快感が伝わってくる。

裕里香さんは、最近は騎乗位がお気に入りのようだ。感じる部位を探しやすいらしい。
「ふああっ……ここ、すごい……やば……」
裕里香さんが口元に手をやりながら、顔を紅潮させて呟く。
どうやら感じる部位が見つかったようだ。
身体を前後するペースが緩やかになり、やがて上下の運動へと変わっていく。
「あ、ああぁ、ああ……」
声にならない声を上げながら、裕里香さんが一定のペースで上下する。
口元にやっていた右手は、裕里香さん自身の胸を揉みしだいていた。
裕里香さんが上下する度に胸にある大きな脂肪の塊も、上下にぶるんぶるんと揺れる。
メスの快感を得ることに夢中になった裕里香さんは、そんなことはお構いなしに動きの激しさを増していく。
裕里香さんから出た愛液が僕のアレに絡みつき、潤滑油の役割を果たしながら寄せては返す快感を与えてくる。

「うっ……裕里香さん、イキそう……」
僕が呟く。
「うんっ、私もイキそうっ……、一緒にっ、イこっ……?……あっ、あっ、ああああああん!!」
言うか言い終わらないうちに裕里香さんがひときわ大きい喘ぎ声を上げると、膣内がぎゅうっ、と僕のアレを搾り取るように何度か収縮する。
「ううっ……」
その締め付けで僕も裕里香さんの中に、大量の精液をぶちまけるように放出した。

「……はぁ」
しばらくヒクヒクと痙攣していた裕里香さんは、僕と繋がったままウットリと余韻を楽しんでいるようだった。
そのまま脱力するように僕の上に完全に乗っかってくる。
裕里香さんの汗で少し濡れた髪の毛が、僕の頬に触れる。汗と愛液の匂いが混じったような淫靡な香りが僕の鼻腔をくすぐった。
僕よりだいぶ小柄な裕里香さんは重くはないが、僕の胸板に、彼女の大きな胸が押しつぶされるように接触し、柔らかさが胸を通じて伝わってくる。
その感触に、さっき果てたばかりだというのに僕のモノはまた反応して硬さを取り戻していた。
「……またおっきくなってるじゃん……ぎゅー」
そう言いながら裕里香さんは、膣を自分の意志で締め、繋がったままの僕のモノを柔らかく締め付けてくる。
「くっ……」
裕里香さんは最近、明らかに女の身体の扱いに慣れてきている。
上目遣いで僕のことを見ながら、反応を楽しんでいる裕里香さん。
「ねえ、大木くん。私たちエッチの相性いいよね?大木くんのおチンチン大きくて、すごく気持ちいいよ。私、大人しく見えるかもしれないけど、本当はエッチな子だから……沢山しようね」
まだ顔を紅潮させながらそう言う裕里香さんの綺麗な顔を見ていたら、急に愛おしくなって抱き寄せ、キスを――

「……何やってんだよ、気持ち悪い」
僕のことを押しのけ、明らかに不快そうな裕里香さんの声を聴いてハッとする。
まただ。またやってしまった。
こいつは、目の前にいる「裕里香さん」は、裕里香さんであって裕里香さんじゃない。
そんな事、わかっているはずなのに。

「やれやれ、興ざめだ。最後まで『裕里香ちゃん』に成りきらせてくれよ。キスは生理的に駄目だって前も言ったろ?」
そう言いながら僕のアレを自分の身体からぬるり、と抜き、ベッドにあぐらをかいて座り込む裕里香さん。
「……悪かった」
なぜキスだけが駄目なのかはわからないが、「この男」はセックスは自分から進んでするくせに、キスは生理的に受け付けないのだ。

数ヶ月前。こいつは裕里香さんの身体に棲みつき、そして乗っ取った。
学校を無断で欠席していたので、心配して裕里香さんの家を訪ねた僕は、その乗っ取りの現場に遭遇した。
――そして、こともあろうか、この男の乗っ取りに手を貸してしまった。本物の裕里香さんは絶望の中で、この世から消滅した。
さらに、僕がやけになって裕里香さんの身体を抱いてしまったことで、この男は裕里香さんの記憶をも手に入れてしまったのだ。

それから、この男と僕は、ある種の「共犯関係」になってしまった。
「裕里香さん」は、僕を何度も性的に誘い、裕里香さんに元々好意を抱いていた僕もなし崩し的に何度も裕里香さんの身体を抱く関係になってしまったのだった。
その関係は、その男と僕とが、二人がかりで裕里香さんを抱くような行為だった。
こいつは、男の僕に興奮するのではなく、「自分が演じる女の裕里香さんの痴態に男として興奮していた」のだ。
先ほどまで言っていたセリフも、僕を喜ばせるためと言うよりは、男の自分が言ってもらいたいことを、自分の口から――裕里香さんの口から言わせているのだ。

「まぁ、お前のチンポと俺のこの身体の相性が良いのは確かだからな。今度は気をつけろよ?」
裕里香さんの可愛い顔に似合わない、下品な言葉を口にしながら、男みたいな表情で裕里香さんがニヤリと顔を歪める。
そして、僕のアレを人差し指で軽く弾いた。
「うっ……」
「お?」
ちょっとビックリしたように裕里香さんが言う。
「いやぁ~、やっぱ高校生ってのはサルみたいに元気なのな。さっき出したばっかだってのに、また勃起してきてるじゃねえか」
裕里香さんが、下卑た笑いを浮かべながらからかうように言う。
「こんな可愛い女子高生の裸を拝めるんだから、何回でもチンポおっ立っちまう気持ちはわかるけどよ。ま、俺は自分の身体だからいつでも拝めるんだけどな?チンポがねえのが残念だぜ、へへへ」
そう言いながら何回も勃起した僕のものを面白そうに何度も弾く。
「懐かしいなぁ、俺もこんな元気な時代あったのかなぁ」
「ううっ……」

落ち着け、落ち着け。こいつは裕里香さんじゃないんだ。
そう自分に言ってみても、学校のアイドルが僕の肉棒を興味津々で指で弾いている光景は、僕のものをさらに硬くするのには十分だった。
「……シゴいてやろうか?」
そう言うと裕里香さんは怪しげな笑いを浮かべながら、小さな手を軽く握り、肉棒を扱くようなジェスチャーを見せた。
「……」
僕が何も答えずにいると、それを肯定と取ったのか、裕里香さんはひひっ、と笑うと、口を半開きにした。
ぬらぬらと、裕里香さんの口から唾液が糸を引きながら出てくる。それを裕里香さんが手で掬う。
ほどなく、裕里香さんの手は自らの唾液でベチョベチョになっていた。

「後ろ向けよ」
言われたとおりに、僕は裸のまま裕里香さんに背を向けてあぐらをかいて座る。
すると裕里香さんの脚が、僕のあぐらの上に、さらにあぐらをかくように絡みついてきた。
「こうして固定して……」
僕の背中に、裕里香さんの胸が密着してくるのが感触でわかる。
裕里香さんの白く、小さい手のひらが僕のアレを握る。裕里香さんの唾液が手のひら全面についていて、潤滑油のようになっている。
「やっぱ俺のよりでけえ気がするなあ……それとも今の俺の手が小さいのか?」
そう言う裕里香さんの吐息が耳元にかかる。
「この向きじゃねえと、いつも俺がしてたみたいに出来ないからな。まあ、俺のオッパイ押し付けてやるから、我慢しろよ」
そう言うなり裕里香さんは僕の肉棒を扱き始めた。
「お、この体勢だと俺が自分のチンポをシゴいてるみたいでいいなっ」
「うううっ」
先ほどの膣内とは別の種類の快感が僕を襲った。
裕里香さんの右手が、僕の亀頭や裏筋を執拗に責め立てる。単調な動きではなく、唾液を潤滑油にして滑らせたり、微妙な動きで握ったり、ぐりぐりと刺激を与えてくる。
「すげえだろ?お前の大好きな裕里香ちゃんの手が、男みたいな慣れた動きでお前のチンコを扱いてるんだぜ」
裕里香さんが僕の後ろで、鈴のなるような声でささやく。
「『あぁ~裕里香さん、僕裕里香さんのこと大好きです、こうして男みたいな手つきで扱かれてるなんて夢みたいです、やばい、すぐイキそう……』。へへへ、興奮するだろ?」
僕の口調を真似ながらも、肉棒を扱く右手の動きを緩めようとはせず、むしろ激しさを増していく。
「俺も男だった頃に裕里香ちゃんにシゴいてもらいたかったぜ……考えるだけでちょっと濡れてくるな」
そう言うと裕里香さんは、空いていた左手で僕の乳首をコリコリを弄りだした。
「どうよ、俺の手と俺のマンコ、どっちのほうが気持ちいいんだ?ほら、イッちゃえよ、あっイクっイクっ」
興奮を加速させるように裕里香さんが男口調で言いながら、背後から胸や下半身を押し付けてくる。
たまらず僕は、裕里香さんの手の中に今日二回目の精液を放出した。

+++

「先にシャワー浴びてくるぞ」
「……ああ」
「あーあ、また大量にぶちまけやがって……これだから盛りのついたガキは……って、俺も今は同い年だったな。華のJKよぉーん、なんてな、ハハハ」
そう言いながら二階にある裕里香さんの部屋から、一階にある風呂場へと遠ざかっていく声を聞きながら、僕はため息をついた。
裕里香さんの「別の顔」の正体がこれだ。
学校では記憶を使って完全に成りすましているから、「上品でお淑やか」「才色兼備のお嬢様」「スレたところがない美人」などと、評判が維持されているが、その本性はこの通り、ただの変態男なのだ。
こんなオッサンが今の裕里香さんの身体に入っている……などということを学校で発言しようものなら、おかしくなっていると思われるのは僕の方だろう。
そのくらい、あいつの「裕里香さんへの擬態」は言葉遣い、仕草、目線の置き方から笑顔の作り方まで完璧だった。
ただ、それでも隠しきれないものはあるのか、「ちょっと雰囲気がエロくなった」という評判は立っていたが、それは僕と付き合い始めたからだ、ということになり、逆に僕の評判が下がってしまったことまであった。

僕はといえば、この男を助けてしまったことを強く後悔していた。
その度、仕方なかったことだ、と自分に言い聞かせていた。
あのまま裕里香さんを助けてこの男を消滅させる事ができていたとしても、裕里香さんを誘惑に負けて襲っていた状況は弁解の余地がなかった。
そのまま警察を呼ばれてしまっていたことだろう。
そう言い聞かせるよりほかに、方法がなかった。

+++

「あー、やっぱシャワーはいいわ。昔は風呂なんて2日に1回でいいと思ってたけどよぉ、この身体になってからは妙に綺麗好きになっちまったな。お前もシャワー浴びてくれば?」
シャワーから出てきて、夏らしい白のミニワンピースに着替えた裕里香さんは、男っぽいがさつな動作でどっかりとベッドに腰掛けた。
下着を身に着けただけだった僕は、ああ、と生返事をしたものの、裕里香さんのワンピース姿と、浮き出ている身体のラインに目を奪われていた。
しかも、男の意識で足を広げてくつろぐ裕里香さんの足の間からは、水色のフリルのついたショーツが見え隠れしていた。
僕が凝視していると、裕里香さんの足が全開になり、下着が丸見えになった。
「やっぱ男って変態だよなあ。そんなに俺のパンティ見たいなら見せてやるよ。これ、裕里香ちゃんのお気に入りだったらしいぜ?」
ニヤニヤしながら言う裕里香さんに対して、僕は顔をそむけながら「足、ちゃんと閉じろよ」としか言えなかった。
「またそうやって強がるところがまだまだガキだよなぁ……しっかし、俺がフリル付きのパンティ穿いてるなんてなぁ。ちゃんと似合ってるだろ?」
そう言うと裕里香さんは立ち上がり、ワンピースの裾をめくり上げて僕に下着を見せつけてきた。
「ここ、チンコもねえんだよなぁ……ま、俺は女だから当たり前なんだけどな。うひゃひゃ、それにしてもいまだに信じられねえな」
そう言いながら、ガニ股になり、スリスリと自分の股の間を手で撫で上げる裕里香さん。
まるで痴漢が触るようなネットリした手つきだった。

「気づいてると思うけどよぉ、クラスの男ども、みんな俺のこと見てるよなぁ?胸とか尻とか、あらゆるところをさ。まぁそりゃそうだよな、そこらの芸能人とか女子アナより俺のほうが可愛いもんなぁ」
「……」
「やっぱり俺でヌイてんのかな?中身が俺だとも知らずによ」
「……」
「あいつら、俺とセックスできるって言ったら何万まで出すのかね?」
「おい!」
「きゃっ!こわーい。そうだよね、裕里香は大木くんのものだもんねっ!」
わざとしなを作りながら可愛い声を出す裕里香さん。
「そうじゃなくて!」
「ハハハ、そう怒んなって。さて……」

そう言うと裕里香さんは立ち上がって、部屋用の小さい冷蔵庫を開けて、缶を取り出す。
「プシュッ」と小気味良い音がして、ゴクッ、ゴクッと裕里香さんの喉を液体が通る音がする。

「ぷはーっ、やっぱセックスしてシャワー浴びた後のビールは良いよなぁ!」
「……ビール?」
ぎょっとして僕は裕里香さんの方を見ると、銀色のよく見る缶ビールを片手にした裕里香さんの口に小さい白い泡が付いていた。

「……何やってんだ!未成年がビールなんて……」
「カタいこと言うなよ、中身はオッサンなんだからよぉ。ビールぐらい飲むわ」
「精神がそうでも、身体は17歳だろ!」
「俺がそのくらいの頃にはもう飲んでたし問題ねえよ……ヤニ入れてるわけじゃないんだしさ、頼むよ順也ちゃーん」
へらへらと取り合おうとしない裕里香さん。

「裕里香さんの身体に何かあったらどうするんだ!」
僕のその言葉を聞くと裕里香さんは一瞬驚いたような顔を見せたが、やれやれといった素振りで言った。
「あのなぁ、それ散々俺に中出ししといて言うセリフかね?」
「ぐっ……」

缶を片手に、部屋のドアを開けながら裕里香さんが続ける。
「お前調子乗ってるみたいだけどよぉ、そういう事言ってるともうヤラせてやんねーぞ?一応この身体を乗っ取る手伝いしてくれたから、感謝してるけどよ。もうこの身体は俺のもんなんだからな?ちょっとそこで頭冷やしてろ」
「う、うるさい!とにかく飲んじゃ駄目だ!」
「おい、やめろって」
部屋から出て、身をよじって逃げようとする裕里香さんに僕は追いすがり、ビール缶を奪おうとした。
階段のそばでもつれながら、危ないと思ったが、その次の瞬間にはもう手遅れだった。
「うわっ!」
階段を踏み外した裕里香さんと僕は、ゴロゴロと階段を転げ落ちていった。
頭を強く打ち、意識が朦朧とする中で僕は、魂が離れていくような感覚を味わっていた。

(後編につづく)

仲良し姉妹

ある夏の日。
平日昼間から茹だるような暑さの中、二人の男が歩きながら話していた。
「あっちぃな……なんか面白れえことしてえなあ」
「そうですね、先輩……そろそろ、『アレ』しときます?」
「先輩」と呼ばれた男は若い外見で、20代前半と言ったところだろうか。
一方そう呼んだ男の方は30代半ばから後半という出で立ちだ。
周囲にはその会話を聞くものも、気に留めるものも居ないが、もし聞いている人間がいたら奇妙に思ったかもしれない。

「『アレ』かあ……ちょっと早いような気もするが、もう『コイツになってから』結構経つもんなあ」
「そうですよ。それに『男の身体に長く居ればいるほど』、余計に滾ってくるんですよねぇ」
「……お前は若いなあ」
「周りから見たら、先輩のほうが若く見えるんですけどね」
呆れたようにそう呟く「先輩」に向かって、若いと言われたほうの男はぷっ、と笑って言った。

「そうかも知れねえけどよぉ、生きてる年数は俺のほうが断然上だろ?精神年齢、っていうかさ」
「とはいっても、確かそんなに変わりませんよ。数十年ぐらいじゃないですか?」
「うーん、そうだっけ?ま、いいか……次に『アレ』するときは、俺はもっと若さを感じられる身体を使うとするかな」
「あーいいっすねぇ……次は性別、どっちにします?」

先輩の宣言を軽く聞き流すと、男はさも重要なことだと言うように声のトーンを低くした。
「うーん。お前は今度、女なんだろ?」
「ええ。元が男だからか、女の身体に入ってるときのほうが興奮するんですよね」
「それじゃ俺がまた男ってのもいいが……なんだ、結構男続きだったからなぁ」
「いいじゃないですか、先輩も女で。OL同士とかでイチャつくのも楽しいと思いますよ?」
「まあ、そうするかあ」
「先輩」も、そういうのもアリかな、という感じで頷く。

「じゃ、こうしません?次に目に入った女二人組に『入る』ってことで」
「えー……オバサン二人組だったらどーすんだよ」
「そういう趣向も意外にありかもしれないですよ。試してないだけで」
「ええー……とにかく俺は若い身体がいいの!」
「じゃあ、先輩が二人組のうち若い方の身体を使う、ってことでどうです?」
「あー……まあいいけど、もし飽きたらすぐ『次』いくかんな!」
はいはい、と笑って後輩が受け流す。
と、次の瞬間、遠くの方を見てニヤニヤと先輩の方を向く。
「あー、こりゃ面白いことになりそうだ。……先輩、ほらあれ」

「……ん?」
指差した先には、おそらく学校帰りと思われる女子高生の姿があった。
「おお!JKじゃん!JK!」
ガッツポーズする先輩に向かって後輩は首を振る。
「いや、先輩、よく見てくださいよ」
「ん……?あっ」

よく見ると女子高生の陰に、ちょこん、と言った感じで背丈の小さな女の子が一緒に歩いている。
ぴかぴかのランドセルは、女の子の背丈に似合わず大きく、女の子がランドセルを背負っているんだか、ランドセルに背負われているんだかわからない。
ちょこまかとした動きに見えるのは歩幅が小さいからだろうか。
仲睦まじそうに、談笑しながら歩いているようだ。

「……先輩、『若い方』って約束ですよね?」
「確かに若いけどさあ!若すぎないか!?」
「まあまあ。じゃあ、善は急げです。行きましょう――」
言うか言わないかのうちに、後輩がふっと意識を失ったようにぐったりする。
やれやれ、とばかりにため息をつきながら、先輩がその身体を支えると、慣れた手つきで壁沿いに座らせる。そして、自分も座ると、先輩のほうも意識がなくなったようにぐったりしてしまった。

と、談笑していた女子高生が、一瞬呼吸困難になったような反応を見せて立ち止まる。
「ひぐっ」
「……おねえちゃん?どうしたの?」
心配そうに見上げる女の子。
「…………」
虚空を見つめるようにして立ちすくんでいた女子高生の目に焦点が戻ってくる。
きょろきょろ、と落ち着かない様子で自分の制服の胸元や、スカート、太ももなどを確認している。
と、女子高生がガニ股になり、急にスカートの上から自分の股間のあたりをスリスリと撫であげはじめた。
「ああ~……そうそう、この感じこの感じ。やっぱこのスッキリした感じが醍醐味だ……。『ないっ!』って感じで。ねぇ先輩。……先輩?」
うっとりした感じで女の子に「先輩」と話しかけていた女子高生が怪訝な感じで女の子の方を見る。

「おねえちゃん……いきなりどうしたの?おトイレしたいの?」
「やだなぁ、先輩。いきなりJKの黄金水ご所望です?レベル高すぎません?それは後々やりますんで、まずは色々確認させてくださいよ」
そう言うと女子高生は女の子に向かって片方の口元を歪めて見せ、下品に笑った。

「やだ、おねえちゃん、こわいよう、べつのひとみたい」
「あれぇ……これもしかして乗り移れてない?せんぱーい、往生際が悪いですよー霊体だけに」
女子高生があたりを見回して呑気そうに声をかける。傍から見ると、誰もいない空中に「誰かいるかのように」話しかけている。
「だれなの……こわいよ」
「あー、えーっと、ほら、怖くないよ、いつものお姉ちゃんだよ~」
ご機嫌を取るかのようにぶりっこポーズを取る女子高生。

「……じゃあ、わたしのなまえいってみて」
警戒した様子で後ずさりしながら女の子が言う。

女子高生は目を一瞬丸くしたあと、「あちゃ~」という感じで答える。
「あー……最近の子はカンがいいなあー。ごめん、お姉ちゃんあなたの名前わかんないや。でも私はどこから見てもお姉ちゃんでしょ?信じて~」

次の瞬間、ランドセルに付けていた防犯ブザーの紐を女の子が引っ張ろうとする。
あ、と声を上げて女子高生が静止しようとする。
間に合わない。そう思った次の瞬間。
「ひうっ」
女の子が先程の女子高生と同じような声をあげると、紐を引っ張ろうとしたまま固まってしまう。
徐々に、徐々に、女の子の目にも焦点が戻ってくる。

「……あぶねえところだったなぁ」
女の子が舌っ足らずな声でつぶやく。先ほどと同じ声だが、どことなく雰囲気が違う。
「さいきんのこどもはけいかいしんがつよいんだからよ、きをつけろよ」
「そんな事言ったって、それは先輩が早く憑依しないからでしょう」
ぷぅっと頬を膨らませながら女子高生が言う。
「すまんすまん。けど、なまえわかんねえのに『しんじて~』もないもんだぜ」
「まあ、それはそうですけど。じゃあ、早速確認しときますか」
そう言うと女子高生はカバンを降ろし、がさがさと荒っぽく何かを探し出す。
女の子のほうも、ランドセルの内側に自分の名前を発見した。

「先輩、こっちの子の名前は『吉川さくら』ですって。さくらちゃんかぁ……くぅ~可愛い名前!俺はさくらちゃん、俺はさくらちゃん…… オッパイも大きいな……ブラ邪魔だな、あとでじっくり確認するか……」
女子高生は自分の名前を連呼しながら胸を制服の上から揉んでいる。
「こっちは、『よしかわ ゆあ』ってかいてあるなぁ。かんじでかいてないが……」
「まあ、『俺達の能力』を使う上では別に漢字かどうかは関係ないでしょう……名前だけわかれば、記憶を引き出せるんだから。んんっ」
言いながら女子高生は額に手を当てると、呟くように言う。
「吉川さくら……年齢は17歳か……聖カトレア高校に通ってる……お嬢じゃん。今日はたまたま、妹の有愛を迎えに来たところ。ふむふむ」
女の子のほうも同様に記憶の読み込みを始める。
「よしかわゆあ……8さい……せんとかとれあしょうがっこう、3ねんせい……」

さくらのほうはふー、っと息をつくと、有愛に向かって言う。
「この子、妹のこと大好きみたいですよ。愛情がすごく伝わってきました。いい子ですねえ……ますます好きになりました、この身体」

言い終わらないうちにさくらは自分の身体を抱きしめながら、自分の匂いを嗅ぎ始める。
「はぁ……俺すごいいい匂いだよ……あ、先輩も嗅ぎます?……先輩?」
有愛はむくれながら先に歩きだしていた。

「ちょっとー、先輩!待ってくださいよ~」
慌てて追いかけるさくら。
「うう……」
「やっぱ不満なんですか、先輩?」
「べつにいいけど」
「あ~ほんと有愛ちゃんかわいいっすね……この身体に多少引っ張られてるのかなあ」
言いながらさくらは、有愛の頭に手を載せる。
「だいたいだな、そもそも、おれのおもってたのはこうじゃなくって、もっとこう……」
うんうん、とさくらが慈愛の目で見つめる。
「ほうまんなおんなのからだにひょういしてたんのうしたいっていうか……」
有愛のあどけない顔つきからは想像もつかないような単語が飛び出し、さくらは笑いを噛み殺しながら言う。
「まあまあ先輩、なんならその身体にしばらくいたらどうです?母親が結構いい身体つきですし、その子も成長すれば……」

metako-simai2.jpg
イラスト:めた子さん

言われて有愛も、少し記憶を探ってみる。
「う、たしかに、このこたちのははおやは、すげー、いいからだしてんな……」
「ですです。10年後楽しみでしょ?それに、まだ有愛ちゃんも一緒にお風呂入ってるみたいですね」
「う」
ぴくり、と反応する有愛。

「やっぱ小さい女の子の醍醐味って、成長してくところだよな~!俺じゃあもうこの子の母親とお風呂入ったりできねぇしな~!」
「そ、そうか?たしかに、これからだよな」
「先輩さえ良ければ、俺は何年でも付き合いますよ、この身体で」
「よ、よし!おまえよりないすばでぃになってやるからな!みてろよ!」
「ちょろい」
「なんかいったか?」
「何でもないっす!あぁ~先輩カワイイなぁ~!!」
有愛の髪をわしわしと撫でまくるさくらであった。

---

「ただいまー!」
「おかえり、あら有愛ちゃん、今日はご機嫌なのね?」
「うん!おねえちゃんに、たくさんいいことおしえてもらったの!」
「あら、そうなの?良かったわね~。さくら、お迎えありがとうね」
「んーん、良いの良いの、お母さん。ところで汗かいちゃったから、早速お風呂場で堪の……シャワー浴びて来るね!」
「ねえママ、きょう、ゆあ、ママといっしょにねてもいいでしょ?」
「あらあら、どうしたの有愛ったら、いきなり抱きついてきて。赤ちゃんみたいね?」
「うん!これからしばらくいっしょのおふとんでねたい!」

一家は今日も平和だった。

---
このツイートをもとに、めた子さんからイラストをいただいたので書きました!ありがとうございます!

天使のような(後編)

天使のような(前編)はこちら

(2017/5/27追記)
tsuniverseのuniverseさんから挿絵をいただきました!前編及び後編に追加しています。

(あらすじ)
学校を無断で休んでいるクラスメイトの裕里香さんの家まで様子を見に来た「僕」が見たのは、鏡で自分の身体を見ながらオナニーにふける、普段とは全く違う裕里香さんの姿だった。男言葉でわけの分からないことを言い、「僕」の目の前で「サービス」と言ってまたオナニーを再開する裕里香さん。イってしまった裕里香さんを呆然と見つめる「僕」は――。

僕は目の前で起こっていることが、まだ信じられないまま、顔を紅潮させその小さな肩で息をする裕里香さんから目が離せずにいた。裕里香さんは相変わらず、焦点の合わない目を僕のほうに向けていた。

「ゆ、裕里香さん……僕は」
「……ユリカじゃねえよ」
「え?」
「そのユリカとかいう女じゃねえ、って言ってんだよ、俺はよ」
裕里香さんはぼんやりと、うつろな目つきでそう言った。
何を言っているのだろう、裕里香さんは。では、僕の目の前にいるのは誰だというのだ。双子のきょうだいでもいるというのか?

「あの……」
「俺はな、普通のサラリーマンだったんだよ。でも、ある日会社クビになっちまってよ。無職のムサいオッサンなんて、冴えないだろ?」
「ゆ、裕里香さん?」
「それでな、俺はある日願ったんだ。神様ってもんがいるんなら、どうして俺にこんな辛い日々を送らせるんだって。次に生まれてくるときには、金持ちで、美人で、スタイルがよくて、なんの苦労もしねえような良家のお嬢さんに生まれ変わらせてくれ、って願って、いつものように酒を死ぬほど呑んで寝たんだがよ」
「……」
「次の朝気づいたら、この女になってたってわけだ!マジでビックリしたぜ!うひゃひゃ!」
裕里香さんはそう言うと、さも愉快そうに、美しい顔を歪めて笑った。
何を言っているのか、僕は全く理解できなかった。

「まあ、信じられねぇかもしれんが無理に信じてもらう必要はねぇよ」
べろり、と唇を下品に舐めながら裕里香さんが言った。

「どっちにしろ、この女の身体はもう俺のモンだし、それを誰かにわかってもらう必要なんてこれっぽっちもねえからな……あぅん♡」
これ見よがしに裕里香さんがしなを作り、僕に見せつけるように片方の胸を揉んでみせる。

「……つまり、君は裕里香さんじゃなくて、男だっていうのか……」
「あぁ。自分で言うのもなんだが、これといった特技もねぇ、パチンコが趣味の冴えねぇオッサンだよ♪それがこんな身体になるなんて、やっぱ神様っているんだな~♪」
裕里香さん、いや、裕里香さんのカタチをした「男」は下着だけになっている自分の身体を抱きしめ、いやらしく撫で回しながら恍惚とした表情を浮かべた。

「一週間もぶっ続けでオナニーしてるのによ、飽きるどころかどんどん感度が増してきてるんだぜ♪このロリ顔にこのエロボディは反則だろ、な、お前もそう思う……」
「ふざけるな」
「あぁ?」
裕里香さんの顔がこちらを睨む。

「……今言ったことを全部本気で信じているわけじゃないが、裕里香さんの身体はお前みたいなやつが使っていい身体じゃない」
「……なに言ってんだお前……?この女の彼氏かなんかか?偉そうな口利きやがって」
下着姿の裕里香さんが立ち上がり、僕の顔を睨みつけてくる。身長に差があるから、裕里香さんが僕を見上げるような形になるが、その威嚇の動作自体はその辺のヤンキーとまるで変わらない。

ふいに怖い顔をしていた裕里香さんが、顔をいびつに歪ませながら笑う。
「まぁ、そうは言っても俺だってこの身体にどうなってなったかわからねぇしよ、元にどうやったら戻るのか、分かるのか?お前」
ヘラヘラしながら、裕里香さんは僕の顔をさらに覗き込む。

「それに」
「うっ……」
「お前も、この女の身体に反応してんじゃねえか?股間にテント貼りながらなぁ~にが『ふざけるな』だよ」
いつしか僕の身体に密着しながら、裕里香さんはニヤつきながら僕の股間を上から撫で回していた。
僕の身体に、裕里香さんの柔らかそうな胸が下着ごと押しつぶされている。僕の足に、裕里香さんの両足が絡みついて、艶かしく動く。

「や、やめろ」
「大木順也だっけ?自分に素直になれよ、大木。この身体に興味あるんだろ?こんな美少女のイヤらしいところを見せつけられて、興奮しない男なんかいねぇだろ?」
見透かすような目で、実に楽しそうに「男」は裕里香さんの顔を使って笑った。まるで、共犯関係になることを誘っているような、たくらみを持った笑みだった。
裕里香さんは僕の目をいたずらっぽく見据えながら、器用に僕のベルトをカチャカチャと外し、僕のズボンをおろし始めた。

「大木、俺も『男』だからよぉ、この女の身体に興味あんだよ、な?オナニーじゃ、味わえない快感ってあるじゃん?」
裕里香さんの小さな白い手が、下着越しに僕の股間をさらにいやらしく撫で回す。

学校の憧れの的だった裕里香さんが、こんな――こんなことをするなんて、信じられない。
いや、待て、この子は、こいつは、裕里香さんじゃない。落ち着け、落ち着け――

僕が必死に自分を抑えようとしているのを眺めながら、「裕里香さん」は僕の耳元まで口を寄せて、囁くように言った。
「ねぇ、しようよ、順也」

気づくと僕は無我夢中で裕里香さんをベッドに押し倒していた。パステルカラーのビーズクッションが、ベッドから床に落ちた。
「お、おい!危ねえだろ――ひゃあっ……んっ!」
僕は裕里香さんのブラジャーを荒々しく外し、その形の良い乳房を揉みしだいた。はじめて触れる裕里香さんの肌はとても張りがあって、柔らかく、手にしっとりと吸い付くようだった。そのまま僕は裕里香さんの乳首を貪るように舐めた。
「はぁっ……お前、がっつきすぎ……あぅっ!この身体、マジで、感度やべえ、よ……」
また顔を紅潮させながら、裕里香さんが喘ぎ声をあげる。
今の裕里香さんの顔は、学校でいつも見るのとも違い、さっきまでの「男」の顔とも違う、純粋で動物的な「メス」の顔になっていた。それがまた、僕を興奮させてしまった。

「お前が悪いんだぞ、お前が、こんな風に誘ってくるから」
僕は自分への言い訳とも取れるようなことを呟きながら、裕里香さんの下着をおろした。裕里香さんの綺麗な下半身が露出した。
裕里香さんはトロンとした目をして、同じように下着を脱ぐ僕を見ながら言った。
「おお、顔に似合わずお前、チンポでけーじゃん、この身体に……入る……の……」
言いながら、突然裕里香さんは目を見開き、苦しそうにし始めた。
「なっ……!?頭が……頭が痛え……」
「お、おい……」
僕の声など聞こえていないくらい、尋常じゃなく苦しむ裕里香さん。思わず身を起こし、頭を抱えて苦しんでいる。
一体どうしたというのだろう?

「カはっ……ヤべぇ……意識ガ」
そう言うと、ガクッと裕里香さんはうなだれ、無言になった。

「ど、どうしたんだよ……」
うなだれていた裕里香さんが、弱々しく頭を上げる。

「あれ……?私、どうして……」
裕里香さんが呟く。

何か様子がおかしい。これは、もしや――
考え終わるか終わらないかのうちに、裕里香さんが振り向き――僕と目が合った。

瞬間、耳をつんざくような恐怖を伴った悲鳴が聞こえた。



「裕里香さん、落ち着いて、落ち着いて」
「嘘、嘘、なんで、大木くんが、なんで私、裸に」
裕里香さんはパニックになっていた。
先程までと全く違う裕里香さんの様子に、僕は直感的に「元に戻った」と感じていた。

「裕里香さん」
「……信じられない、どうして!?大木くん、ひどいよ」
「裕里香さん、落ち着いて。話をとにかく、聞いて」
僕は「落ち着いて」と繰り返すのが精一杯だったが、客観的に見て全く説得力はなかった。
裕里香さんからすれば、目覚めたら裸にされていて、そこに全裸の僕がいたという状況なのだ。しかも、股間のモノを勃起させながら。

布団で身体を隠しながら、ガクガクと震える裕里香さん。
僕はなだめようとして少し手を伸ばしたが、
「裕里香さん」
「嫌ァァァァァァ!来ないで!来ないでぇ!」
金切り声を上げる裕里香さんに、僕はどうしていいかわからないまま、伸ばした手を降ろした。

いつの間にか、裕里香さんは自分のスマホを手に取っていた。震える手で、パスコードを入れている。
「ゆ、裕里香さん、何を……」
「警察、警察に電話を……助けて……」
「ま、待って……違うんだって!」
「ひっ!」
思わず大声を出した僕に、裕里香さんは怯えたように息を飲む。
しかし、もう一度意を決したように、スマホで番号を押している。
警察を呼ばれるのは、まずい。

「や、やめろっ……」
僕は叫んで、裕里香さんからスマホを取り上げようとしたが、裕里香さんは必死で抵抗した。

「嫌ァッ!近寄らないで!誰か、助けてっ!」
「違う、違うんだって」

しばらく揉み合っていたが、裕里香さんの動きが突然止まった。
「……裕里香さん?」
「……あ、頭が、頭が痛いっ……私……いや、俺……このカラダはもう俺のもんだっ……誰にも渡さねえぞぉっ……嫌ぁっ……誰なの……私が、私じゃなクなルっ……怖いよ、た、助ケテ……」
突然苦しみだす裕里香さん。これは、さっきと同じ――

呆然としていると、「裕里香さん」が言った。
「おいっ、大木っ……、お前も、手を貸せっ」
「て、手を貸せって……」
「嫌ダっ、私、消えソウ、助けて、助ケテエっ」
一人二役のように、「裕里香さん」の中に、あの男と本物の裕里香さんが同居して、せめぎ合っているかのようだった。

助けなきゃ、本物の裕里香さんを、助けなきゃ――
僕はそう思ったが、その思いと裏腹に、僕のもっと深くの声は全く違うことを言っていた。

<裕里香さんを助けてどうなる?お前はさっき、あの女からあんなに嫌がられてたじゃないか>
「違う、あれは、勘違いで」
僕はかすれた声で呟いた。

<勘違い、ね。じゃあ、その勘違いとやらを全部説明したところでどうなる?お前は、結局「あの男」の誘惑に負けて、ヤろうとしてたんじゃないのか?>
「それは……」

<その時点で、もうお前とあの男は共犯関係だ。どうあれ、二人とも裸になってたんだ。誤魔化しきれないぞ。それに――>
「それに?」
僕は、答えがわかっていながら、自分で自分に聞き返した。

<お前は結局、まだ「裕里香さんとヤリたい」って思ってるじゃないか>

僕の中で何かが弾けたような音がした。
僕は苦しんでいる裕里香さんに、近づいた。

「大木っ……あとひと押しなんだっ!オおキくん……タスけテ……手を貸せっ!大木っ!」
くるくると表情を変える裕里香さんの目の前で、僕は言った。

「裕里香さん、ごめん。君にはもう、この世界から消えてほしいんだ」

一瞬の静寂。

「ウソ、ナンデ、オオキ、クン」
次の瞬間、瞳孔を見開いた裕里香さんが、か細い声で、ポツリと言った。
そのまま、裕里香さんは無表情のまま固まった。

何時間も経ったように思えたが、もしかしたら数秒の間だったのかもしれない。

裕里香さんの目に焦点が戻り始め、無表情だった裕里香さんの顔は、ゆっくりと、ゆっくりと、あのニヤけたような嫌らしい笑みに変わっていった。
「頭痛が消えたぁ……」
「裕里香さん」は、嬉しそうに言った。



「サンキュー大木、お前がまさかあそこまで言うとはなあ?おじさんビックリしたぜ♪」
あぐらをかいた裕里香さんが、裸のままで、嬉しそうに自分の胸を揉みながら話している。
僕は自分のしでかしたことの結果を目の前でただ眺めていた。

「お前が最後決めてくれなかったらあいつ、消滅しなかったかもなぁ、このカラダにしがみついてたからよぉ、うひひひ」
裕里香さんの漏らす声は、ゲスな笑い、という表現しか見当たらなかった。
そして、僕はその共犯者だった。

「何がしてほしい?お前は恩人だ、なんでもしてやるよ♪」

僕は渇いた喉から、声を絞り出した。
「――さっきの」
「うん?」
「さっきの、続きだ」

一瞬ぽかん、とした顔をした裕里香さんが、ニタァと口角を吊り上げる。
「お前すげぇわ、この状況でもセックスかよ?俺よりお前のほうが悪党だろ」
「うるさい」
ぼくは無表情で呟いた。

裕里香さんは、ひひっ、とまた堪えきれない笑いを漏らした後、その綺麗な唇から甘えた声を出した。
「ねぇ順也くぅん、あたし、カラダがうずいて、熱くて仕方ないのぉ……さっきは『邪魔』が入っちゃったから……ね、さっきの続きしよぉ?」

言うか言い終わらないかのうちに、僕は裕里香さんを押し倒していた。
「裕里香さん……裕里香さん」
僕は、「その男が入っている器の名前」を何度も呼んだ。

「順也くん♪来てぇ……はやく挿れてぇ♡クフフっ」
何がおかしいというのだろう。変わった女の子だ、裕里香さんは。
僕はトロトロの愛液まみれになった裕里香さんのアソコに、自分のモノをゆっくりと挿入した。
「あっ♪あっ♪入ってくる感覚がするぜ……やべっ……新感覚だ♪腹ん中すげえ満たされてる♪男だったときには絶対味わえない感覚だ♪」

僕は力任せに、何度も何度も腰を振って、裕里香さんの中をかき回した。

「あうぅっ!!あっ、あっ、ぁあっんんっ!んんんっ!この女の身体、今までで、中が一番、……んんっ!んうっ!ぅあっ!」
息も絶え絶えになりながら、僕が腰を振るのにあわせて高く大きな喘ぎ声を出す裕里香さん。
その美しく真珠のように艶やかな肢体は、もうピンク色に染まっていた。

「あんんっ!ぁあっ……あっあっぁ……やべ、こえ、すごいでる、きもち、よすぎるっ」
裕里香さんはもう完全に目の焦点が合っておらず、髪を振り乱した裕里香さんの唾液が口元を伝ってシーツを汚していた。

「イキそう、イくっ、イくぅぅぅっ」
裕里香さんの膣が奥の方からきゅうっ、と締まるような感覚がして、裕里香さんの身体がビクビクと痙攣を起こした。

その締め付けに刺激されて、僕もほぼ同時に絶頂を迎えた。



裕里香さんは、その後も呆けたような顔でだらしなく足を拡げたまま、しばらく身体をヒクヒクと痙攣させていた。
でも、こいつは――裕里香さんじゃない。裕里香さんは、もういない。

この後どうすればいいのか、と思う僕の横で、アイツが言った。
「な、なんか、来る……あっ、あっ、記憶が流れ込んでくる……」
「記憶……?」
「こいつの名前、いや、違う、『私の名前』、『天草裕里香』、こういう字を書くのか……。楽しかった『パパとママとの思い出』、『幼稚園のときの初恋』、『はじめての生理』……『今の学校のクラスメイトのみんな』……、『私の記憶』が、洪水みたいに……ああああっ!!」
裕里香さんの身体に入ったあいつが、さっきイッたときのようにまたビクン、ビクンと痙攣を起こす。

「お、おい……」
僕が驚いていると、裕里香さんが目を開けた。
「……おはよう、『大木くん』♪」
そう言って、そろそろと身体を起こし、小首を傾げてにっこりと笑う裕里香さん。
その表情は、「いつもクラスで見る裕里香さん」そのものだった。

「なっ……」
もしや、また「本物の裕里香さん」が戻ってきたのか。僕が身構えていると、裕里香さんは言った。
「驚かなくてもいいんだよっ♪……俺、こいつの記憶が読めるようになったみてぇだなぁ?」
裕里香さんの顔の表情が、みるみるうちに歪んでいく。あいつの顔だ。

「そ、それじゃあ……」
「大木くん、あなたは私の命の恩人だよ。その上、イかせて貰ったことで『私の記憶』も手に入れられたみたい」
うふふ、と上品に笑う裕里香さん。とても、アイツが裕里香さんの身体に入っているとは思えない仕草だ。
記憶を読んだことで、裕里香さんのように振る舞えるようになったのか……?

「ね、そんなことより」
すすす、と近寄ってきた裕里香さんが、僕の首に手を回しながら言う。

「大木くん、私、まだし足りないの♡もう一回、エッチしよっ!記憶を使って、『裕里香そのもの』になってしてあげる♡」



天草裕里香――裕里香さんは、僕らのクラスの人気者、という表現ではとても収まりきらないくらい、誰からも好かれる女の子だ。
ぱっちりとした大きい目、透き通るような白い肌、ふるふるとした唇。スタイルの整った身体、程よく大きい胸。
僕だけじゃない。みんながその美しさに見とれていた。
裕里香さんはクラスの、いや学年中の男子の憧れの的だった。
その容姿だけではない。裕里香さんは天真爛漫で、素直で、誰にでも優しく接する。
嫌味なところがなく、その容姿を鼻にかけるようなこともしない。だから、男性だけではなく女性からも好かれる。

そんな裕里香さんが、僕と付き合っているという事実は、既に全校生徒の知るところとなっていた。
裕里香さんが皆に伝えたのは、僕が「命の恩人」であり、「本当の自分を取り戻させてくれた」ということだった。
確かに、ウソはついていないかもしれない。だが……。
そのおかげで、僕はクラスの男子からは「一体どんな手を使ったんだ」と羨ましがられ、クラスの女子からも一目置かれる存在になったのだった。

全ては、何事もなかったように。だが、僕は知っている。
裕里香さんはもう、裕里香さんのようで、裕里香さんではないのだ。
僕が、裕里香さんを消したから。

「お、順也。お前の彼女がいるぞ」
クラスメイトにそう言われ、ふと顔を上げると、廊下の向こうでは裕里香さんがクラスの女子と話しているところだった。

「なんか裕里香さん、変わったよな。髪型がポニーテールになったから?いや、それだけじゃなく……なんつーか、エロくなった?っていうか……お前の影響か?」
クラスメイトはからかうつもりで聞いたのだろうが、僕の表情は強張っていた。そう、それは僕の責任だ。
髪型がポニーテールになったのは、単に「アイツ」の好みだからだ。「裕里香さん」の意思じゃない。

裕里香さんはこちらに気づくと、僕の方へ駆け寄ってきた。
「ねえ、放課後、今日も私の家に来るでしょ?それとも順也くんの家に行く?」
ニコニコしながらクラスメイトの前でも、臆面もなく話しかけてくる。
クラスメイトにからかわれるのには、慣れてきた。しかし――

裕里香さんが俺の耳に顔を近づける。女の子の、シャンプーの匂いが鼻をくすぐる。
「俺の身体、楽しみたいだろ?わかってんだよ、悪魔」
そう言うと裕里香さんは、僕にしか見えない角度で、ニヤリとゲスな男の笑いを浮かべた。
この笑いだけは、慣れない。
でも、僕はこの呪縛から、もう逃れられないのかもしれない。

「裕里香~、何話してるの?行っちゃうよ?」
「ごめん~、すぐ行く!」
裕里香さんが応える。

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「アイツらもそのうち喰ってやろうかな」
小声で僕にぼそっ、と呟いたあと、クラスの女子のほうに走って行く、裕里香さん。

「じゃ、また後でね♪順也くん♡」
振り返って、小首を傾げてアイツが微笑む。

裕里香さんの微笑みは、すべての人を幸せにする。
その笑顔は、優しくて、意味ありげで――

そう、まるでそれは、天使のような。

(おわり)

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皆月なななです。 TSF(男が女になっちゃう)小説を書いています! Twitterもよろしくね https://twitter.com/nanana_minaduki

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