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幼なじみ

「おーい、朝だぞー」
亜子が今日もやってきた。
俺の幼なじみ。幼稚園からずっと同じクラスだ。
だが、俺はもうずっと高校に行ってない。

「いや、俺はもう、学校行く気ないから……ほっといてくれよ」
「ええっ、でも、学校楽しいよ?きっと行ったら楽しくなってくるよ」
心の底から心配した様子で亜子が言う。

ベッドに横になりながら、俺はほとんどその話を聞かずに亜子のことをぼーっと見ていた。
幼稚園の頃から見ていた亜子。
今もどこか幼い顔をしているが、高校の制服に包まれたその身体は幼稚園の頃とは違うのだと主張しているようだ。
特にその、ブレザーの上からでもわかる、胸が……。

「ちょっと!聞いてるの?」
亜子が怒ったように言う。

「うるさいなあ、そんなに言うなら亜子が俺の代わりに行けばいいだろ!」
その言葉を聞いて、亜子が不敵な笑みを浮かべる。

「ふっふ~ん。そう言うと思ってね。今日は私の能力を見せたいと思います!」

「えっ?」

と、思っている間に視界がぐるん、と回る。
ジェットコースターみたいに、一回転。

気づくと俺は、俺を見ていた。
「えっ?えっ、何が、って、げほげほ!んんっ!」
なんか声が上ずって高くなってる。

「えっ!?な、なんか手が小さい!」
「何で俺が女子の制服着てるの?」
「俺の胸が!」
「なんでスカート……って下着まで!」
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「な、ない!ないーーー!」

視界の中の俺は俺が慌てる様子を楽しそうに眺めていた。

「ふふーん、身体を入れ替えてみました」
「お前、もしかして亜子か?ってことは、これは……」
「そう!私の身体です!!」
この上ないドヤ顔で答える俺。俺ってこんな顔できたのか。

「これ元に戻るのか?」
「戻しません!」
「戻しませんって、お前……」
「さっき言ったでしょ」
「え、な、何を……?」

「私が代わりに学校に行きます!!」

---

というわけで、亜子が代わりに学校に行ったわけだが。
まさか、あんなことになるなんて。

帰宅中に、道路に飛び出した1学年下の少年を助けようとした亜子――俺の身体はトラックにはねられてしまった。
即死だったそうだ。
その少年は、自殺するつもりだったらしい。皮肉なことで、その少年は助かったのだ。

俺との入れ替わりのことは誰にも言ってなかったらしく、俺は、亜子の身体で一生を過ごすことになってしまった。

5年後――

「ママ、行ってきまーす」
「亜子、気を付けて行ってくるのよ」
「大丈夫大丈夫!」

俺は、亜子のフリをして過ごしている。もう大学2年になった。
入れ替わった当初は戸惑いがちだった亜子のフリも最近は板についてきた。
今は自分が亜子だという気持ちで過ごすことができるようになってきた。
昔では考えられないぐらい、明るい女子大生を演じている。

あの頃は制服だったが、今では私服で学校に行っている。
亜子ならどんな服を選んだんだろうか。

「亜子、おはよう!」
「正樹、おはよう」
この大学生は、俺の身体の亜子が助けたあの男の子だ。
一つ年下なのだが、なぜ呼び捨てなのかというと、俺は正樹と付き合っているのだった。
あの事件があってからすぐ、正樹側からの猛烈なアタックがあって、思わずOKしてしまった。

俺としては、男と付き合うなんてごめんだったのだが、正樹だけは違った。
正樹といると、本来の自分に戻れるような不思議な感覚がするのだった。
「今日わたし、学校行きたくないよ~……」
普段誰にも見せない、俺の本来の姿。元気な亜子とは違う引きこもり体質の俺。

「何言ってんだよ亜子、学校楽しいよ?きっと行ったら楽しくなってくるよ」
心底心配した様子で、正樹がいう。
「ん?そのセリフ、どこかで聞いたことあるような……」
「え?あっはっは、気のせい気のせい。それよりさ、またお前の服、選んでやるから今日講義終わったら買い物行こうぜ」
「う、うん……」

正樹っていいやつなんだけど、講義の最中も、終わった後も、ずーっと俺と一緒にいるんだよなあ。
服も高校生の頃から全部選んでくれるから、正直楽なんだけど。
なんか監視されてるみたい?っていうか……
だいたい、何で女の服にそんなに詳しいんだよ?女装趣味でもあるのか?
それに、自殺しようとしてたと思えないぐらい、明るくて元気なんだけど。

聞きたいことはたくさんあったが、いつもごまかされてしまうのだ。
それに……

「なあ亜子、それで、今日の夜も……な!」
「うん、わかってる。本当に正樹、好きだよね」
「俺は亜子の気持ちいいとこなら全部わかるからな」
こう豪語する正樹、言うだけあってあっちの方がすごく上手いのだ。
それに、女の身体は男の時より格段に気持ちいい。
亜子には悪いけど、これだけは女になって本当に良かったと思っている。

「ああ、俺も男がこんなに気持ちいいなんて……っと、何でもない。今日も楽しみにしてるよ」
「う、うん!」
俺は、正樹に抱かれることを想像して、早速身体と股間が熱くなるのを感じていた。

---

F(えふ)さんが投稿されていたこちらを見つつストーリーを付けさせていただきました!

入れ替わりの指輪

「あ、あたし、清彦になってる……」野太い男の声が聞こえる。声に似合わず、喋り方が女のようで気持ち悪い。
とはいえ、その声は数分前まで俺のものだった声だ。

「ああ、本当に起こるんだな、こんなこと」鈴のなるような可愛らしい声で俺が答える。
「あーあー」
声を出すと耳が気持ちよくて、ついつい声を出したくなって、発声練習のようなことをしてしまう。それを怪訝な様子で俺の顔が見つめている。

本当に変な気分だが、他人が動かしている自分の顔を見ていることで、自分が他人―双葉になったことが実感できる。
「なあ、双葉」「えっ?」双葉と呼ばれた、俺―清彦の顔がこちらを見る。そんな他愛のないことをしながら、目の前の俺のカタチをしているものが、双葉なのであるということを、確認していく。
まさか、本当に入れ替わるなんて。

---

きっかけは今日、双葉が持ってきた指輪だ。
「ねえ、この指輪なんだけど……」双葉が差し出したのは、一見何の変哲もない銀色の指輪。
だが、ペアリングなのか、二つある。

「何?これ」
興味はあまりなかったが、聞いてみる。俺が興味あるのは双葉だけだ。
付き合って3か月。あどけない感じの唇。サラサラの髪。くりくりと可愛らしい瞳。それらのパーツが整った顔になっている。
しかも、身体も俺好みだった。今日は白いタートルネックのセーターを着ているから、胸が強調されている。今でも近づかれると、胸ばかり盗み見てしまって、双葉に怒られる。太ももも白くしなやかで、すらっと伸びて、美しい。全体的に柔らかそうで、バランスのとれた身体。

俺は早く双葉の身体をもっと見たい――簡単に言えばセックスしたかったのだが、セックスはおろか、キスすらまださせてもらっていない。本人が嫌がるのだ。そんな双葉と付き合えたこと自体が俺にとっては奇跡のようなものだったが、早くもっと二人の関係を進展させたいと思う俺にとって、双葉の言うことはなんでも興味をもって聞いてみたかったのだ。

「これね、『入れ替わりの指輪』なんだって。友達にもらったの」
「『入れ替わりの指輪』……?」
俺はあからさまに怪訝な顔をしていたのだろう。双葉は慌てたように言った。
「あ、でも、わたしも全然信じているわけじゃないんだけど」
ぱたぱたと手を振りながら答える。本当にかわいらしい。
「なんかね、これをお互いの指につけると、お互いの心が入れ替わるんだって」

そんなこと、あるわけないじゃないかと言いかけて俺は考え直した。まてよ。
ここで、俺が双葉のことを否定してしまえば、何も起こらないどころか、双葉を悲しませるだろう。
逆に、「入れ替わりの指輪」とやらに話を合わせて聞いてあげれば、双葉も喜んでくれるかもしれない。
実際にもし入れ替わったら……俺は、双葉の身体をもっと「よく知る」という千載一遇のチャンスを手に入れるわけだな。俺は絶対にありえない妄想をたくましくした。

「なるほど。面白そうじゃん。それを付けて、入れ替わってみようよ、俺たち」
「え、でも……」
自分から言い出しておいて、なぜか渋る双葉。どうせ入れ替わらないのだから、ごっこ遊びのようなものだというのに。
渋られると、ごっこ遊びとはいえ、俺もなんとかして乗り気にさせたくなってくる。
「俺、入れ替わって双葉の視点で色々見てみたいよ。双葉だって男の感覚、味わってみたら楽しいと思うしさ」

色々言ってなだめすかしていたら、ついに双葉が折れた。
「うーん、じゃあ、ちょっとだけだよ」
双葉はそう言いながら、とてつもなく嬉しそうな顔をしていた。
「どうした?」
そう俺が聞くと、また慌てたように双葉は答えた。
「えっ!?あ、違うの。これはその……清彦が、わたしの事にそんなに興味を持ってくれるのが嬉しくて」
そう言うと双葉は、恥ずかしいのか俺から顔をそむけた。
こういうところも、双葉の可愛いところだ。

---

そんなわけで、彼女の部屋に来て、指輪をお互いにつけることになったのだが、まさか本当に入れ替わるとは思ってなかった。
見下ろすと、二つの丘が俺の白いタートルネックの胸元を押し上げている。自分の下半身が胸に隠れてよく見えない。
ベージュのスカートから、普段の俺では考えられない、すべすべとした色白の足が伸びている。俺は思わず恥ずかしくなって目をそらすが、今、これは自分の脚なのだ。スカートの中で足をすり合わせると、普段味わえない、内ももと内ももがさらさらとこすれ合わさる奇妙な感覚がする。毛もないすべすべとした感覚だ。

夢にまで見た、双葉の身体。今、これは俺の身体なんだ。

「あ、あんまりじろじろ見ないで、私の身体」
オカマみたいな口調で俺の声が恥ずかしそうに響く。そうだった。双葉に見られてるんだった。
「そうは言うけどさ、気になるんだよ、双葉の身体。俺たち付き合ってるけど、キスもしたことないじゃん」
「それはそうだけど……」
男性恐怖症でもあるのか、頑なにキスを拒んでいた双葉は不満そうにしながら、チラチラと俺を盗み見る。
「ん?」
俺はある違和感を抱く。
俺になった双葉の目線が、俺の――つまり双葉の、目を見ていないような気がする。その目線の先にあるのは――

「自分の胸、そんなに気になるか?」
言い当てられて、俺になった双葉はハッとした様子で横を向く。
「べ、別に」
俺はニヤニヤした。なんだ、結局双葉も、興味あるんじゃん。

「双葉の胸なんだから、別に双葉が見てもいいんじゃないかなあ?」
そう言いながら俺は、わざとしなを作りながら、自分の脇をしめるようにして、胸を強調させる。
「ちょ、ちょっと!やめてよ!」
そう言いながら、双葉は俺の胸から目が離せなくなっている。
なんだか楽しくなってきた。

「そんなこと言って」
俺は双葉の声で囁きながら、俺は真っ赤になった双葉のそばにすすす、と這いよる。
そして耳元で言う。
「双葉、勃起してんじゃん」
「えっ」

俺の身体が正直なのか、双葉の精神がそうさせたのか、俺のアレはズボン越しからもわかるぐらいに股間を盛り上げていた。
「こ、これは……」
「双葉、興味あるだろ、正直になろうよ」

双葉がふと、俺の顔を見つめる。
俺の目は自分でもわかるぐらいに潤んでいて、顔は紅潮していて、いつもの双葉なら絶対に浮かべないであろうエロい表情を浮かべていたのだろう。
双葉の息が、近くでわかるぐらいに荒くなってくる。

「ねえ、しようよ」
双葉だったらこんな口調で言うだろうな、と思って、双葉のマネをして、鈴のなるような双葉の声で俺が言った。

その声が完全にトリガーになったようだった。
双葉の目が据わって、俺の顔に双葉の顔が近づき、そして、唇が重なる。

初めてのキス。男として双葉にキスできなかったのは残念だが、元に戻ったらこれまでより仲良くなってるはずだ。
ついに、俺は双葉の心理的な壁をクリアした。俺は内心ほくそ笑んだ。

それにしても。
女のキスって、本当に全身で感じるんだ……
思わず俺は目を閉じる。キスの快感を全身で感じたくて。そうか、女が目を閉じるのはこういうことだったんだ。

いちいち感動しながら、俺はちょっとした違和感を感じていた。
なぜ、双葉はこんなにキスが上手いんだ?
貪るように、双葉のぷっくりとした唇に、舌に、吸い付いてくる俺の唇。
あんなにキスを拒んでいた双葉。なんで自分から?
だが、そんな違和感は女としてのキスの気持ちよさに消し飛んでいた。もっともっと……

---

息ができないほど激しいキスのあと、ぷはっ、と唇を離して、俺の顔が言う。
「ねえ、もっと気持ちよくなろっか」

双葉が自分からこんな事を言うなんて。これも、俺の体に引っ張られてるんだろうな。
「うん」
雰囲気を崩して、この千載一遇のチャンスを逃してなるものか。俺は、大人しくそれに従った。

セーターを脱いで、露わになるブラジャーに包まれた俺の胸。思わず俺は自分の胸の谷間に目が釘付けになる。
思ったよりも、大きい。あ、こんなところに、ほくろがあるんだな。

双葉に「あんまりジロジロ見ないでよ」と言われそうな気がして、俺は慌ててブラジャーを脱ぐ。
若干苦労したが、身体が覚えているのか、意外に簡単に脱ぐことができた。
ふるん、という擬音が出そうなほど形の良い2つの乳房に、思わず「おお」と声をあげかける。
ハタから見ると可愛い女の子が見慣れているはずの自分の胸に大興奮しているという異様な光景だ。

急に、双葉の身体が俺を押し倒す。
「……もう我慢できない」
双葉が荒い息でそんなことを言いながら、俺の胸を優しく触る。
数時間前まで俺のものであったごつごつした男の手が、今では俺のものになった女の乳首に触れる。
「ひゃうう」
自分から出た女の声に驚く暇もなく、双葉は俺の気持ちいいところを的確に攻めてくる。

俺は為すすべもなかった。
「あん……、ああん…」
自然に女みたいな嬌声が出ていた。
「その身体の気持ちいいところなら、全部わかってるんだから」
女の身体って、やばい。気持ちいい。
「あん!あああああん!」

---

俺は、あっという間に双葉にイかされてしまった。
初めて味わう女の身体の快感の余韻にボーっとしていると、いつの間にか全裸になっていた双葉が俺に言った。
「ねえ、今度は一緒に気持ちよくなろうよ」

ニヤニヤしながら言う双葉の表情はまるで男みたいで、直感的な違和感を感じた。
双葉の精神が入っている俺。その下半身が露わになっている。股間は勃起していた。

俺はなんとなく気恥ずかしさを感じたが、そんなこと双葉はお構いなしに俺の上に覆いかぶさった。
「ちょ、ちょっと待って、まだ心の準備が……」
「そんなもん関係ねえよ」
男のような口調で双葉はそう言うと、双葉はさっきの快感ですでにグチョグチョになった俺の中に、かつて俺のものであったモノを挿入した。

「ひっ」
ぬるんとした、男では絶対に感じられない「中に入ってくる」という感覚。
その初めての感覚で、下半身に力が入る。

「おお、いい締め付けしてくるねぇ」双葉が言う。
さっきから、何かがおかしい。双葉が、まるで男みたいに。何かおかしい……。

違和感が頭の中で実を結ぶまえに、双葉が俺の腰を掴み、ピストン運動を繰り返す。
「あっ、あっ、あんっ……」
繰り返し感じる感覚一つ一つが、男のときの射精よりも気持ちいい。
寄せては返す快感で、俺の頭は埋め尽くされてしまった。

「あん、あん、あん、あん」
ヤバい。これが続いたら、頭がおかしくなる。
快感で、俺の目は焦点を結べず、俺は目を閉じる。
潤んだ俺の瞳から、涙がつーっと自然に流れ落ちる。
女の身体。双葉の身体。
この身体の快感を、双葉はずっと感じていたんだ。

「あん、あん、あん、」
やばい、何かが。
「これ、イく……イッちゃうっ」
「俺もイくっ……!」
え、今双葉が「俺」って言った……?
快感の海に溺れながら、微かにそう思った気がしたが、その後にものすごい量の快感が押し寄せ、俺は気を失った。

---

「おい、そろそろ起きろ」
男の声で、俺は目が覚める。あれ……俺、どうなったんだっけ……?
股間がヌルヌルして、気持ち悪い。あれ、なんか変な、喪失感が。股間のモノがないような……
じわじわと、思い出してくる。そうだ、俺、双葉と入れ替わって。

「双葉……」
俺は双葉の名前を呼ぶ。

「双葉?双葉はお前だろ」
「え、何を言って」
「鏡見てくるか?お前は双葉。俺は清彦だろ」
「いや、そうじゃなくて、『入れ替わりの指輪』で……」
「はぁ?」
心底意味不明だと言う様子で俺の顔をした男が答える。

「え、だって、あれ、あれっ……?」
パニックになる俺を見ながら、「清彦」はしかめっ面を崩して吹き出す。
ああ、よかった。双葉はふざけて俺をからかっていただけだったんだ。
そう思った俺に、男は言った。

「お前、まだ俺の事を本当の双葉だと思ってたのか」
どういうことだ。俺は確かに、双葉と入れ替わって……だからこそ、俺は今双葉の身体でいるんじゃないのか。

二の句が継げなくなっている俺に、やれやれと言った様子で「そいつ」は言った。
「だからさ、最初からお前、俺に騙されてたんだよ」
「双葉じゃない……?お前、双葉をどこにやったんだ!」
「だから違うって。俺も前に、その『双葉』の身体の誰かに騙されてさ、その身体に入ってたわけ。お前がずっと『双葉』だと思ってたのは、俺だったんだよ」
「じゃあ、『入れ替わりの指輪』を友達に貰ったっていうのは」
「嘘に決まってるだろ」
「そんな……」
「この指輪で、誰かと入れ替わるチャンスを狙ってたんだよ。男の身体に戻れるチャンスをな。大変だったぜ、お前に怪しまれないように入れ替わりをしぶったフリをするのも」
俺は絶句する。俺が入れ替わりを説得したときの、双葉の嬉しそうな顔。
あれは、違う意味だった。「これでやっと男に戻れる」という意味だったのだ。
「双葉」の中身が元々男だったということが分かった今となっては、すべての行動に納得がいく。

「そんなの認められない!今すぐ俺を戻せ!」
「いやぁ、それが無理なんだわ。入れ替わった状態で一回元の身体とセックスすると、もう元には戻れないのよ。嘘だと思うならやってみてもいいけど」
おそらく、言ってることは本当なのだろう。俺はがっくりと肩を落とした。

「でも、お前多分、俺より女のセンスあるから大丈夫だよ」
双葉……いや、双葉ではなかった。その男は俺の顔でニヤッと笑った。
「俺は男とキスするのもごめんだと思ってたけどさ、お前、全然平気みたいだったし。セックスしてるときのお前、完全に女だったしな」
ぽんぽん、と呆然としている俺の頭を叩くと、清彦になった男は言った。
「まあ、その『入れ替わりの指輪』で適当な男を騙して、男に戻るのもよし。お前もよくわかってると思うけど、『双葉』は相当魅力的な女だから、よりどりみどりだよ。それとも」
ニヤリと笑う男。
「いつでも俺に連絡してこいよ。その身体の気持ちいいところは知り尽くしてるんだ」

---

かつての俺の身体が出ていった後、俺はベッドの上でへたり込んでいた。
これからは、俺が双葉。
夢にまでみた憧れの双葉の身体。魅力的で、なんとしてでも俺のものにしたいと思っていた身体。
その体は、文字通り「俺のものになった」。
これからはいつでも、見たい時に見られる。触りたい時に触れる。その触る手すら、双葉の手なのだが。
俺はそっと、自分の長い髪に右手をやる。細くて長い髪。ふんわりと、双葉のいい匂いがする。

俺はあいつに渡された、ペアの「入れ替わりの指輪」を見ながら、これからのことを考え始めた。

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プロフィール

みなづきななな

Author:みなづきななな
皆月なななです。 TSF(男が女になっちゃう)小説を書いています! Twitterもよろしくね https://twitter.com/nanana_minaduki

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